名水の聖地「生地」で最強に濃ゆい“びっくり水”で調理してみたら、驚きの結果に!
清水の里と称される黒部市の生地地区。生地にある酒蔵、皇国晴酒造内だけでも3ヶ所の湧水があり、そのうちの一つは「びっくり水」と呼ばれているほどに個性豊か。今回はこの不可思議な水の可能性に迫ってみました。
清水(しょうず)の里、黒部生地地区
3000m級の北アルプスの雪解け水が黒部川扇状地を通り、海に近い末端部分で伏流水が豊かに湧き出している地域があります。
黒部市の生地地区には湧水スポットが20ヵ所あり、個人宅も含めると600ヵ所にもなるという、まさに清水の里。
以前名水スポット巡りをしたときに、その中でひときわ異彩を放つある清水と出会いました。
名水百選・皇国晴酒造の「岩瀬家の清水」
その水はマボタキ(幻の瀧)でおなじみの皇国晴酒造の敷地内にあります。
手前の銀色の円形の深井戸が酒造りに使用されている軟水です。
仕込み水や洗い物などに幅広く活用されていて、名水百選の水が酒蔵内に湧いているのは全国でもこちらだけ。
今回スポットライトを浴びるのはこの軟水…ではなく、その奥にある清水です。
軟水と硬水がわく不可思議な湧水
ぼくはこの水を初めて飲んだときに衝撃を受けました。
ほんのりしょっぱくて味は複雑さを極め、一言でいうと濃ゆいとしかいいようがないのです。
この水はミネラルをたっぷり含んだ硬水で、正直軟水に比べると飲みにくさがあり、硬水は酒造りにも使えないしで、この水は何のために存在しているのだろうとずっと気になっていました。
皇国晴酒造株式会社の岩瀬新吾社長にお話を伺ってみると…
岩瀬社長「この水は、びっくりさせるためだけに存在しているんですよ」
はい…!?
この水は蔵内で「びっくり水」と呼ばれています。
びっくり水の硬度は予測不能
軟水の硬度は毎年ほぼ35mg/lなのに対し、硬水は平成元年で550mg/l、平成18年で1200mg/l、令和3年で740mg/lと、年によって異なっています。
毎日味見を欠かさないという岩瀬社長によると、日によっても味が違うそうで、面白さは抜群ですがその際立つ個性が故に、何にも使われていないというこの清水。
ぼくはこの水を飲んでからずっと気になっていました。この水を料理に使ったらどうなるのだろうか…と。
今回いくつか試してみましたので、個人の感想としてご紹介させていただきます。
富山県民のソウルフード「とろろ昆布」
まずは富山県民の原点、とろろ昆布にお湯を注いだもの。
軟水である水道水と比較すると、水道水の方が昆布の香りは強め。
無添加かつお出汁パック
右の水道水の方が色が濃くて香り豊か。そう、昆布のグルタミン酸やかつお出汁のイノシン酸は軟水との相性が抜群なのです。
日本の水は殆どが軟水ですから、郷土の水と料理は深く交わってるということなのですね。
とはいえ、びっくり水の方も味わい深くて好きですけどね。
硬水といえばパスタでしょ
逆に硬水はヨーロッパ系の料理と相性が良いのです。
水道水のみのパスタは酸化したような匂いがあり若干の小麦臭さも感じられましたが、びっくり水のパスタは香りが清々しく甘さすら感じられます。
茹で時間や麺の太さも変えてみた結果、びっくり水のほうが若干アルデンテに感じられましたが、塩分もあり沸点も異なるので厳密な比較にはならないと思われます。
牛すね肉と大根の塩煮
左側がびっくり水ですがアクがすごい!アクを丁寧に掬うことで臭みのないスッキリとした味に。
大根は水道水のほうが柔らかくなりましたが、硬水は煮崩れしにくいという利点もあります。
むね肉ゆで鶏にびっくり!
鶏の胸肉を同時に茹でて、同じように切ってみました。
左が水道水のもの。切り口が荒いです。
こうなると舌触りが与える食味の違いは決定的です。
茹で汁の味見をしてみたら超びっくり!水道水はほぼお湯なのに対し、びっくり水は薄味ながら程よいスープになっていました。
〆は,とやまパエリアで!
富山の水、魚、米で作ったパエリアに皇国晴酒造の日本酒をあわせれば、濃厚な魚介の味わいがそよ風のように心地よく調和して、抜群の包容力を発揮してくれます。
このパエリアには一粒の塩も加えられていないのに、塩加減は絶妙。
ぜひ皇国晴酒造を訪れた際には、このびっくり水を体験してみてください。日祝以外の9:00~17:00であればいつでもウエルカムですぞ!