アルペンルートをサイクリングと徒歩で探検!立山参道三十三観音巡りへのチャレンジ
登山だけじゃない、アルペンルートの新たな楽しみ方。サイクリングと徒歩で立山の石仏群を尋ねる「三十三観音巡り」にチャレンジしてみました。日本三霊山の一角である立山では、修行者によって建てられた石仏たちが今も現存しています。石仏巡りを通して、立山信仰の奥深い世界と大自然の息吹を感じてきました。
現代まで続く修行の道、立山参道
アルペンルートは日本最大の山岳観光ルートとして親しまれていますが、実はそのルーツは修験道。9世紀半ばに開山された立山は修験者が登り拝んだ「修行の山」、江戸時代に立山信仰は庶民へと広がります。立山は地獄極楽の世界をこの世で体験できる霊山として全国的に信仰を集め、最盛期にはひと夏で6千人もの人々が登拝したそうです。
参道には石塔と石仏が祀られ、雄山へ至る道標として修験者を導いたといいます。これらの遺構群は、富山県の有形民俗文化財に指定されています。それらの建造時期は南北朝、室町、江戸と様々で、その半数以上は現在まで残されています。
「立山参道三十三観音巡り」は修験道の現代アレンジ
国道6号の整備以降は立山は気軽に行けるスポットになりましたが、その昔はまさに修行道そのもの。「三十三観音巡り」は修行僧たちが歩んだ足跡をサイクリングと徒歩で繋ぐ試みというわけです。このような三十三箇所巡りは全国各地でもありますが、自転車を併用するのは立山町ならではの巡礼スタイルと言えるでしょう。
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修験の道を辿る立山信仰の世界
立山信仰の世界は、この記事一本には収まりきらないほどの奥深さを誇ります。石仏以外にも様々な信仰の対象が、立山中に散りばめられています。石仏巡りと一緒に訪ね歩くのもおすすめです!
修験の道を辿る立山信仰の世界サイクリングで石仏を巡る「前編」パート
前編のサイクリングパートは、岩峅寺から立山駅までの約16km。参拝可能な石仏は11箇所あります。(※1番/12番は所在不明)
自転車を持っていない方でも大丈夫。「グリーンパーク吉峰」のレンタルE-BIKE(イーバイク)を利用できます。五百石(ごひゃっこく)駅でも同様のレンタルが可能ですが、岩峅寺(いわくらじ)に近い吉峰スタートがおすすめ。岩峅寺から立山駅まではずっと登り基調ですが、電動アシストのパワーでスイスイ走れます!
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立山町でE-BIKE(イーバイク)レンタル
立山町観光協会ではE-BIKE(イーバイク)レンタル拠点を3箇所オープンしています。ゆうへいさんのサイクリング体験記はこちら。
立山駅前でE-BIKE(イーバイク)をレンタルして称名滝に行ってきた!アルペンルートを歩く「後編」パート
後編の徒歩パートは、立山駅から室堂平を結ぶ約30km、標高差約2,000m。参拝可能な石仏は13箇所。(※14 / 16 / 18 / 24 / 27番は所在不明。15 / 33番は立入禁止箇所に現存)
普通であればバスで1時間上り続けるルートで、当然ながら徒歩は非常に険しい道のり。まさに修験道にふさわしい難易度です。後半の石仏群は弥陀ヶ原、天狗平バス停で途中下車して参拝することも可能ですが、バスの時刻表をしっかりと把握する必要があります。全編自らの足でチャレンジする場合は、ウエアや食料など万全の装備でいきましょう。天候の急変にも要注意、無理は禁物です。
2日に分けていざ挑戦!まずはサイクリング編
サイクリングと徒歩、2つのパートはご自身のスケジュールと体力レベルに合わせて調整してください。無理して全部回ろうとしなくても大丈夫ですし、数体は未発見のままなので多少の見落としは許しましょう。前置きが長くなりましたが、実際にチャレンジしてみました!
まずはグリーンパーク吉峰でE-BIKE(イーバイク)をレンタルし、岩峅寺まで3kmほど走っていざスタート。筆者にとって普段から走り慣れているコースですが、マップを頼りに進みます。とある石仏は奥まった茂みや反対車線にあり、見落とし注意です。
順調に進んで立山駅にて十三番石仏を拝んだら、これでサイクリング編は全制覇。帰りは下り基調でラクラク進み、吉峰でE-BIKE(イーバイク)を返却して終了です。経過時間は3時間、移動距離は36kmで完走できました。
参拝する度にストップアンドゴーがありますが、E-BIKEの電動アシストのおかげでスムーズに再出発できます。長い上りも息を乱すことなく走れて心強い限り。体力に自信の無い方でも、E-BIKEであれば気軽にチャレンジできます!
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道中必見の「伝説のコンビニ」
立山駅までの道中で必ず前を通過する、あの黄色い建屋。バスや電車では素通りしてしまうところを、サイクリングなら気軽に立ち寄ることができます!
伝説のコンビニ「立山サンダーバード」の個性ハンパないって!徒歩パートは技量に合わせてチャレンジ
徒歩パートはアルペンルートの雪解けを待ち、6月中旬に実行することに。というのも、開通初期の4月は石仏が雪に埋もれて参拝が叶わなかったのです。涼しい晴天の日を狙って、立山駅にクルマを停めていざ出発。まずは始発ケーブルカーで美女平までワープします。
歩くアルペンルートは筆者も初体験で、万全の装備で挑みます。補給食にドリンク、防寒着までフルセットを背負ってチャレンジ。トレイルランシューズを履き、トレーニングのつもりでコースを走り始めます。深い木道が続き、ひんやりとした空気で身が引き締まるようです。
この歩くアルペンルートはなかなか険しく、スマホのGPS+紙のマップで位置を確認しつつ進みます。美女平遊歩道コース、ブナ平・称名滝展望コースと途中まで進みましたが、22番石仏で天候が怪しくなり、泣く泣く引き返すことに。経過時間は2時間半、移動距離は15km、獲得標高は300m少々でした。
次回は万全のコンディションでリベンジ、全制覇しようと固く誓いました。
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室堂散策レポート
今回のチャレンジのゴール地点は室堂平。スケジュールに余裕のある方は一泊して周辺を散策するのもオススメです。せっかく登ったなら120%楽しんでしまいましょう!
一人旅でも楽しめる!立山黒部アルペンルート「室堂」散策のススメ修験道に散りばめられた立山の神秘
石仏巡りの過程で、たくさんの絶景と大自然の神秘に出会うことができました。サイクリング編は普段トレーニングで走るお馴染みのルートながら、ここに石仏があったのか!という新鮮さを味わえ、実は町中の色んな場所にひっそりと置いてあることにも気がつきました。
徒歩編では荘厳な山々の空気、杉の大樹、移り変わる空模様が印象的で、非日常な光景続き。自分の足で巡るからこそ、景色が鮮明に見えるのかもしれません。修験者はなぜ山を目指すのか?その理由が少しわかった気がします。
石仏巡りで味わう立山グルメ
サイクリング終わりに、E-BIKE(イーバイク)返却場所と同じグリーンパーク吉峰にある「喫茶カモミール」でカレーランチをいただきました。立山ポークカレーは素朴なご家庭の味、さらにゴロゴロ大きな豚肉がとても良い一皿です!夏はサラダうどんやラベンダーアイスもありますよ。
徒歩パートでは、立山駅前のゲストハウス「Locomotion Coffee and Bed」のこれまたカレーランチをご紹介。水分少なめのスパイシーなルーは食べ応え満点で、サラダとスープが付いてきます。ソフトクリームとコーヒーもあり、ゆったり寛ぐにも最適。山の空気が心地よいテラス席がおすすめです!
おわりに:石仏巡りが開く、自分だけの立山物語
筆者にとっては自転車パートは易しく、徒歩パートは一筋縄ではいかないチャレンジングな体験でした。歩くアルペンルートは、万全の準備と体調で秋口を狙って再挑戦するつもりです。石仏巡りは立山のまだ見ぬ一面を知るキッカケとなり、ますます魅了されてしまいました。全制覇できた日には、ぜひ記事に書き起こしたいと思います!
とりわけ徒歩パートは厳しい道程ですので、体力とスケジュールに合わせて無理なくチャレンジしてもらえたらと思います。石仏全てを巡ろうとせずとも、普通ならば素通りしてしまうような光景に出会えるはず。自分だけの修験道を踏みしめ、ぜひ新鮮な体験を持ち帰ってください!