北陸工芸の祭典「GO FOR KOGEI」徹底ガイド!富山駅の北側でアート探検
2023年9月15日~10月29日に開催されている「GO FOR KOGEI」。富山の駅北をめぐりながら個性あふれる美術作品を楽しめる、ワクワクが詰まったイベントの様子を写真と共にお伝えします!
「GO FOR KOGEI」とは
「北陸工芸の祭典GO FOR KOGEI」は豊かな自然、風土から生まれた日本の工芸の魅力を国内外に発信する取り組みとして2020年からスタート。2022年までは北陸3県それぞれに会場があったのですが、今年は会場を富山市に集約。富山市を象徴する水辺である、富山駅北側の富岩運河沿いの3つのエリア(環水公園、中島閘門、岩瀬)をめぐりながら作品を鑑賞できる形になりました。各エリアは富山のこれまでの歩みと、今を象徴する場所なので、富山の歴史を知る旅にもなります。
今回は国内外の26人の作家さんによる絵画から陶芸、インスタレーションまで多彩な作品が集結し、町が一段とカラフルな雰囲気になりました。それぞれの会場には徒歩や路面電車で移動して鑑賞できます。時間があれば富岩水上ライン(観光船)を使うのもおすすめ。車での移動ももちろん可能です。
本記事では富山駅からスタートし、岩瀬に向かうコースをご案内します。宝の地図を手に、冒険に出る気分で、半日のアート鑑賞の旅を楽しみましょう!
Column
鑑賞のコツ
取材中、総合監修を務める秋元雅史名誉教授(東京藝術大学)に、私のようなアート初心者が鑑賞する時のコツを聞いたところ「新しい友達を作るような気持ちで見てほしい」と教わりました。「どんな子なのかな?」という感覚で接してみて、その結果好きになってもちょっと苦手になってもOKだとお聞きし「肩ひじはらず楽しもう!」という気持ちになりました。
巨大なオブジェと焼き物の作品を満喫!「環水公園エリア」
環水公園エリアの会場は樂翠亭(らくすいてい)美術館、富岩運河(ふがんうんが)環水公園、富山県美術館の3か所です。最初に訪れたのは、富山駅から徒歩約10分の「樂翠亭美術館」です。ここでの展示は焼き物、土がテーマ。館内には多種多様な作品が置かれており、焼き物の持つ可能性の大きさに驚きました。
下駄を履いて美しい日本庭園に入ると、その先に富山の工事がテーマの作品や、建物内から続く坐禅のアートなどが置かれています。
ここでの個人的なおすすめは、蔵に展示されている「信楽焼変異体」。まるでアニメや漫画、ゲームの世界のようでした。うちの小中学生の子どもたちにも見せたい、と感じました。
樂翠亭美術館から徒歩約8分のところにある富岩運河環水公園内の運河には「やまいぬ」という巨大なアートが!
まわりの風景と調和しており、まるで映画の中に入り込んだような錯覚に陥ります。多くの人が足を止めて写真を撮っていました。
環水公園の中を約10分歩いたところにある「富山県美術館」の2階に展示されているのは、自由に触り、自分で被ることもできる布の作品です。作品を手がけたフランス出身のオードリー・ガンビエさんはクラシックバレエを学んだ経験のあるアーティストで、見た人が身に付けて動くところまで含めて味わってほしい作品だとのことです。
個性あふれる絵画を楽しめる「中島閘門エリア」
「中島閘門(なかじまこうもん)エリア」の会場は、中島閘門操作室、芝生の広場、元タクシー会社社屋「電タク」の3か所です。
中島閘門操作室では、枯葉からできた生き物を展示した作品があり、その細かさと想像力の豊かさに心を奪われました。
芝生エリアにあるのは、ゲームや出版、広告やアパレルなど多様な分野で活躍中のアーティスト、上田バロンさんがアクリルで描いた大きな絵巻です。富山に由来する生き物がたくさん入っていて、想像力をかき立てられました。小さな子どもから大人まで一緒に楽しめそうな作品です。
芝生エリアから徒歩1分ほどの場所にある「電タク」の入り口には、日本発の「KAWAII(カワイイ)カルチャー」の第一人者、かつ世界に広めたアーティストとして知られる増田セバスチャンさんによる作品「Polychromatic Skin -Gender Tower- #北陸」があります。おもちゃを中心とした世界中の素材を使って絵の具を使わずにカラフルさを表現し、多様性を伝えようとしているそうです。風に揺れるタワーを見ながら、世界に思いをはせました。
社屋には他にも、場の空気感をいかした展示が多数あり、とても面白かったです。
歴史ある町並みがさらに魅力的に!「岩瀬エリア」
歴史ある街並みが印象的な岩瀬エリアの会場は8か所。すべて徒歩で移動できます。このエリアには、歴史を感じさせる場の雰囲気を生かしたインスタレーション(場所や空間全体を作品として表現するアート)がたくさんありました。
特に印象的だったのは、桝田酒造店(ますだしゅぞうてん)満寿泉(ますいずみ)のエリア。酒造店が特別な空間になっていて、心奪われました。
街歩きでの注目ポイントは、平子雄一さんの作品の数々。独特の色彩のポップな絵画や、そこに出てくるキャラクターの像が随所に置かれていました。それを見つけて回るのが、宝探しのようでとても楽しかったです。
馬場家では、会期中に現地で油絵が進行し、できたものから展示されていくプロジェクトが開催されています。運が良ければ(または事前にSNSでチェックしていけば!)、アーティストの桜井旭さんが描いている様子を見ることができます。
馬場家にある『KOBO Brew Pub』は、クラフトビールが飲めるお店。なんと、ここにも作品が展示されていました。未知の生物「リンジン」とそれを発掘・研究するN氏、という作品を貫く独特の世界観が建物の雰囲気にマッチしています。この会期中だけの世界観になっているので、ビールやドリンク片手にぜひお楽しみください。
岩瀬エリアでは他にも工夫いっぱいの方法で多彩な作品が展示されているので、散歩がてら、作品鑑賞を心ゆくまでお楽しみください。
移動手段のおすすめは「富岩水上ライン」
3つのエリアには、路面電車と徒歩や、車の移動でも行けますが、時間があればぜひ「富岩水上ライン」もご利用ください!
環水公園の中にある乗船場から中島閘門までは40分ほど、岩瀬までは1時間ほど。水辺から眺める町はまた違った魅力があります。
今回は環水公園から岩瀬までを富岩水上ラインで移動したのですが、水辺の風景、サギやカモ、カワセミなどの水鳥をゆったりと見ることができ、贅沢な時間になりました。中島閘門の「水のエレベーター」も楽しかったです。なお、富山駅までの帰り道や、中島閘門で降りた時の岩瀬までの移動は、路面電車を利用できます。
【番外編】富山らしい薬の文化とアートを楽しめる「池田屋安兵衛商店」
GO FOR KOGEIの前後に時間が作れそうな方は、富山の町なかにある「池田屋安兵衛商店(いけだややすべえ)商店」にも行ってみてください。昔ながらの建築様式や、薬の看板の数々、江戸時代から続く漢方薬、レトロなパッケージの配置薬から、昔から続いてきた身近なアートを感じられると思います。
こちらは150年前から使われていた、手動で動く丸薬製造機。希望者は無料で、作っている様子の見学や体験ができます。
お土産には、薬はもちろんのこと「反魂飴」という昔ながらの飴もおすすめです。パッケージには、昔の薬の包み方が書かれています。富山の薬売りがおまけとして配っていたと言われている「紙風船」も人気、とのことです。
探検気分で楽しんで!
実は「GO FOR KOGEI」に行く前は「自分はアートをうまく理解できないのでは?」と少し不安に思っていました。そんな時、総合監修を務める秋元さんに「新しい友達を作るような感覚で」と教えていただいたことで、肩の力を抜いて鑑賞できました。それぞれのアートを見つける道のりも宝の地図を手にした探検のようで楽しかったです。
ぜひ皆さんも新しい友達に会いに行く感覚で、行ってみてください。きっと、新たな発見や収穫があるはず!
中学生以下は無料なので、お子さんと一緒に行くのもおすすめです。