砺波で日本酒とウイスキーを醸す酒蔵を見学&酒粕を使ったスペシャルランチを楽しむ(富山県砺波市)
JR城端線 油田駅のそばにある「若鶴酒造」は、明治末期にこの地で酒造販売をしていた稲垣家によって酒造りが受け継がれてきました。戦後ウイスキーの蒸留所が造られ、日本酒とウイスキーの両輪で「若鶴酒造」の発展を支えてきました。日本酒とウイスキーの両方を製造する会社は全国で3社しかなく、稀有な存在です。
ここ「若鶴酒造」では、ウイスキー蒸留所の見学ができるほか、レストランや試飲コーナーなど五感で愉しむことができます。
「大正蔵」には、かつて日本酒を熟成した琺瑯(ホーロー)のタンクが並ぶ
「若鶴酒造」の敷地の一番南側にある「大正蔵」と名付けられた建物で、アテンド役の小林さんが迎えてくれました。
「大正蔵」という名の通り、この建物は大正時代に建てられたそうで、1922年から日本酒の醸造が行われていたそうです。その後、昭和蔵も建ち醸造場所としての役目を終えました。現在の建物は平成25年に改修されており、土蔵造りの中にモダンな大空間が広がっています。かつて日本酒を醸していた場所には今も緑色の巨大な琺瑯(ホーロー)製のタンクが並び、一本のタンクには9,000〜10,000ℓのお酒が入るそうです。
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「若鶴酒造」のある砺波市とは?
富山県南西部にある砺波市は、チューリップの球根栽培面積が全国1位を誇り、毎年春に開かれるチューリップフェアには全国各地から観光客が訪れます。砺波平野には屋敷林に囲まれた「アヅマタヂ」と呼ばれる伝統的建築様式の家屋が点在しており、雄大で美しい景色は郷愁を誘い、懐かしい記憶を蘇らせてくれるでしょう。
お楽しみの試飲タイム、自分好みの味を探そう
「大正蔵」にある試飲コーナーでは「若鶴酒造」で醸した「苗加屋」「若鶴」などの日本酒、「三郎丸蒸留所」で熟成された「サンシャインウイスキー」などの試飲を楽しむことができます(一部有料)。いろんな銘柄を少しずつ飲み比べながら、自分好みの味を見つけてみてくださいね。
また館内には「若鶴酒造」の歴史や変遷とともに、「大正蔵」のリノベーションについて紹介した模型やパネルの展示もあり、お酒好きだけでなく建築ファンにとっても見応えのある内容になっています。
日本酒の美味しさの秘密は、敷地内に湧く庄川の伏流水
「大正蔵」の入り口には、若鶴と書かれた樽に、竹筒から庄川の伏流水が流れ落ちています。「若鶴酒造」では土地の恵みを生かした酒造りをしたいという想いから、庄川の伏流水を使って仕込みを行っています。ミネラルが豊富に溶け込んでおり、杜氏や蔵人の手によって清らかな水の素晴らしさが時間をかけて引き出され、お酒の美味しさの一部となっていきます。
北陸最古のウイスキー蒸留所
ウイスキー造りが行われているのは「三郎丸蒸留所」です。白壁に黒瓦をのせた木造の建物は、かつて軍事工場として活用されていたものを移築し、1952年にこの地でウイスキーの醸造がスタートしました。扉を開けて室内に入ると、たちまちウイスキーの香りに包まれました。蒸留所の1階は熟成庫になっており、最低でも3年は樽の中でウイスキーを熟成させるそうです。
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こんなところに「ウイスキーキャット」!?
蒸留所の入り口の庇を見上げると、井波彫刻の彫り師が造った木彫りの猫が外の様子を眺めています。古くからウイスキー造りが盛んに行われてきたスコットランドでは猫は守り神として崇められており「三郎丸蒸留所」にもウイスキーキャットが飾られることになったそうです。
蒸留所改修までの道のりと、ウイスキーの製造工程を知る
2階にある芋焼酎を製造していた当時の室(むろ)を活用した「室ジェクションマッピング」の部屋では、「三郎丸蒸留所」のウイスキーの製造過程を映像でわかりやすく学ぶことができます。原料の二条大麦の麦芽に、砺波の水を加えてデンプンを糖に分解するところから、ニューポット(ウイスキーの原種)になるまでの流れを、イラストを使って分かりやすく紹介しています。
展示スペースでは「三郎丸蒸留所」が2017年に改築して以降製造をスタートしたブレンデッドウイスキー「MOON GLOW」を紹介してくれました。このウイスキーはイギリスのワールド・ウイスキー・アワードで「ジャパニーズ ブレンデッド リミテッドリリース」の12年以下の部でベストウイスキーに選出されています。パッケージに描かれた月は、新しいウイスキーを発売する度に、月が満ちていくそうです。
高岡鋳物のポットスチルを開発、地場産業の力を借りて美味しさを追求
「ZEMON(ゼモン)」は400年の歴史を持つ高岡銅器の梵鐘の製造技術が画期的な蒸留器です。素材が青銅(銅と錫の合金)であることで、錫の効果によって酒質がまろやかになります。また「ZEMON」は、リッチな酒質を得る設計になっており、ネックが短いランタンヘッドと下向きのラインアームに特徴があります。
蒸留前に木桶の発酵槽に入れているのも「三郎丸蒸留所」が取り入れている製造過程のひとつです。ウイスキーの製造は、毎年6〜9月にかけて行われ、期間中はいっそうのピート香に包まれています。
井波彫刻の職人の手で、南砺市のミズナラを使った樽製造も開始
ウイスキーの原料となる二条大麦やピートは、手にとって触感や香りを確かめることができます。また1960年に蒸留したモルト原酒から2016年蒸留のニューポットが4つの年代に分けて並べてあり、無色透明な液体が琥珀色のまろやかなモルトウイスキーへと変わる姿を知ることもできます。
ウイスキーの樽には主にオークが用いられていますが、「三郎丸蒸留所」では南砺市利賀村にあるミズナラの木を使った井波彫刻の職人による樽造りも進められています。
「竈flamme 炭三郎」で酒粕や糀を使ったスペシャルランチを味わう
見学がひと通り終わったら「竈flamme 炭三郎」で、スペシャルランチ!若鶴酒造の酒粕や糀を使った特別なメニューを味わえます。
厨房に立つのは、富山市にあるホテルで長年腕を振るったシェフ。ホテルで培った洋食の技を生かし、酒粕や糀の魅力を丁寧に引き出した料理を作っています。
レストランは誰でも利用でき、若鶴酒造に由来する素材や砺波の食材をふんだんに取り入れた週替わりランチや酒粕カレーなども味わえます。富山の発酵食文化にも触れられる、若鶴酒造の魅力が詰まったランチをぜひ味わってください。
楽しい時間の締めくくりはお土産選び
ランチを食べ終えたら、同じく「令和蔵」にあるショップでお土産選びの時間です。「若鶴酒造」「三郎丸蒸留所」で製造されているお酒のほか、ウイスキーを使ったスイーツや、お酒と相性のいい富山ならではのおつまみ、限定の酒器や工芸品なども販売しています。渡す人の顔を思い浮かべながら、お土産選びを楽しみましょう。
「若鶴酒造」の歴史が刻まれた「大正蔵」や北陸で唯一ウイスキー造りをする「三郎丸蒸留所」は酒造りだけではなく、豊かな自然と伝統産業に支えられる富山の魅力も随所に発見できます。ぜひ見学に訪れてくださいね。
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「若鶴酒造」は油田(あぶらでん)駅(JR城端線)からすぐ!
油田駅は「若鶴酒造」から歩いて1〜2分の距離にあり、見学の途中に試飲される場合は電車利用がおすすめです。
「若鶴酒造」では見学をスタートする時間を列車の到着時間に合わせているそうで、訪れるお客さんのことを考えた心づかいもうれしいですね。
駅名は、この地域で菜種油の製造が盛んだったことに由来します。
お申込み方法
「砺波の酒蔵見学と至福の酒粕スペシャルランチ」のプランは、下記よりご予約いただけます。