八尾、五箇山。民芸のまちへ潜り込む
[富山旅10to5]富山駅からはじまる7時間の旅
地域の文化風土に根ざし、職人によってつくられる手工芸品。職人の丁寧な手仕事によって作られる民芸品には、あたたかな味わいや、伝統や文化による奥深さがあります。思想家・柳宗悦は、このような生活道具に美を見出し「民芸運動」を提唱し、様々な芸術家たちに影響を与えました。
柳の足跡があちこちに残る富山で、民芸ゆかりのスポットをめぐりましょう。富山駅を出発し、富山市民俗民芸村へ、そして「おわら風の盆」で知られる富山市八尾町を訪れます。八尾にある桂樹舎は、民芸ファンに人気のスポットです。さらに足を延ばして、民芸の世界観が体現された五箇山へと向かいましょう。
富山市民俗民芸村
富山の民芸の世界への入口
富山駅から車で約8分。緑あふれる呉羽山の麓に、民芸館、陶芸館、売薬資料館など9つの施設が集まっています。どの施設も見ごたえがありますが、民芸ファンが見逃せないのは民芸館。使い慣らされた日用品や、日々の暮らしに深く関わる生活用品など、民芸的な美しさが見出された展示物が並びます。
呉羽山公園 展望台
立山連峰を望むビュースポット
民俗民芸村のすぐ近くにある呉羽山公園の展望台に寄り道しましょう。立山連峰が美しく見える場所「立山あおぐ特等席」に指定されているビュースポットで、晴れた日には立山連峰の雄姿が広がります。
【楽しさをプラス】桂樹舎
丈夫で破れにくい八尾和紙は江戸時代、富山の薬の包装紙として重宝されました。その歴史を引き継ぐのが桂樹舎です。創業者は柳宗悦や染色家の芹沢銈介との交流を通じ、現在の八尾和紙の特徴である型染めの技法を生み出しました。伝統的かつモダンなデザインの型染め和紙を使った文庫箱やペン立て、名刺入れなどのアイテムは、センスのいいお土産にぴったり。事前に予約すれば紙漉き(すき)体験もできます。
八尾のまちなみ
「おわら風の盆」の舞台の静かな日常を知る
古くは飛騨街道の要所としてカイコや和紙の産業で栄えた八尾。「おわら風の盆」で全国的に有名ですが、普段の静かな八尾も、 石垣や石畳の通りに格子戸の町屋が並ぶ、散策が楽しいまちです。日本の道百選に選定された諏訪町本通り周辺をのんびり歩き、昔ながらの製法や味、風情を守るお店を訪ねてみましょう。
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おわら玉天本舗
おわら玉天本舗越中を代表する銘菓。口の中に卵の香ばしさと甘みが拡がる。
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味噌醸造元 水上芳一商店
味噌醸造元 水上芳一商店まるで子育てのように心を込めて育て上げた糀を使った味噌は絶品。
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玉旭酒造
玉旭酒造大量生産せず、とことん富山県産にこだわった手作りの清酒を購入できる。
やまふじぶどう園
四季折々のぶどう畑を眺めてひとやすみ
北陸で最も古いぶどう園&ワイナリーに寄り道しましょう。丘の上にぶどうを植えたのが1927年、その後1933年からワインづくりを手がけているそうです。カフェスペースでは1年を通じて旬の食材や果物を使ったスイーツ、ランチが楽しめるほか、売店ではオリジナルのワイン販売も行っています。
こちらではシーズン中にぶどう狩りが楽しめます。
庄川峡
四季折々の峡谷美を眺めながらドライブ
富山市内から一路、五箇山エリアへと向かいます。庄川沿いの道は絶好のドライブロード。小牧ダムから上流は庄川峡と呼ばれ、美しい景観が広がる観光地として多くの人が訪れます。ひとやすみするなら庄川水記念公園がおすすめです。
五箇山和紙の里
もうひとつの越中和紙の里を訪ねる
富山県の八尾、五箇山、蛭谷(びるだん)の3つの産地の和紙は、「越中和紙」と総称され、国の伝統的工芸品に指定されています。
八尾和紙に続き、五箇山和紙の製造元「五箇山和紙の里」を訪ねましょう。民芸調の小物や紙類のほか、既存の和紙の感覚にとらわれない新ブランド「FIVE」の洗練されたアイテムも人気です。こちらでも紙漉き(すき)体験もできるほか、道の駅も併設しており、休憩にも便利です。
五箇山 相倉 合掌造り集落(宿泊)
おとぎ話のような風景に癒やされて
険しい山々に囲まれた五箇山には相倉と菅沼の2つの合掌造り集落があり、岐阜の白川郷とともにユネスコの世界文化遺産に登録されています。いずれの集落でも人々が日常の暮らしを営んでおり、世界的にも珍しい「人が住まう世界遺産」です。
相倉集落には、20棟の合掌造りの家屋が並びます。山間の気候風土に合わせて発達した合掌造りの家屋と、そこで育まれた独自の生活文化には、民芸の世界観が凝縮されています。相倉集落内には合掌造りの民宿が数軒あり、特別な宿泊体験ができます。