とやまの人の、好きなとやま-1

“とやまの人の、好きなとやま” を探しに出かけてみませんか?
富山の「人」「つながり」にフォーカスし、そのバックストーリーを通じて富山ならではの魅力をお届けする「
Hitotoyama」。音が聞こえるような旅の臨場感をお伝えする特集「旅の音」では、当地の自然の恵みを五感で存分に味わえるイタリアンレストラン「ヴィバ ラ ヴィータ」に注目します。地元で活躍する方の “とやま愛” 溢れるおすすめの食やスポット、タイムリーな富山の旬の情報もお届けします。

特集:旅の音|木々の緑に癒される里山のレストランへ

車の往来が激しい国道から稲葉山方面へ少し入ると、緑豊かな里山の風景が広がります。段々畑の合間にぽつんぽつんと民家があり、鳥のさえずりと草のそよぐ音だけが響いている――そんなのどかな場所に2024年5月にオープンした、宿泊もできるイタリアンレストラン「ヴィバ ラ ヴィータ」。北イタリアで料理を学んだ オーナーシェフの牧谷政睦(まさちか)さんが迎えてくれます。

周辺の自然と一体となった食空間

古い民家を改修した空間は、ところどころにかつての面影を残し、初めて訪れたとは思えないような親しみやすさを感じさせます。着席し、ダイニングスペースの大きな窓いっぱいに広がる景色を見渡すと一気に心がほぐれ、ゆったりとした心持ちに。厨房から聞こえる薪のはぜる音と炭の香りが心地よく食欲を刺激します。

イタリアの「アグリツーリズモ」を富山で実践

この地で生まれ育った牧谷シェフは約30年前、イタリアの「アグリクルトゥーラ(農業)」と「ツーリズモ(観光)」を合わせた「アグリツーリズモ」という考え方を知ったと言います。それは牧谷シェフの人生を大きく変えた 出来事でした。「過疎に悩む地元と自分の好きな食の世界が、一本の線でつながったような気がしました」
やがて「いつか豊かな自然が残る地元・小矢部(おやべ)で、その土地ならではの食材でゲストをもてなす レストランを作る」という夢を描くように。北イタリアのトラットリア、リストランテ、ホテルで料理を学びながら本場のアグリツーリズモの世界を体感しました。

受け継ぐことが文化になる――シェフの情熱

イタリアでの学びは大きかったと言います。家具などは壊れても修繕して大事に使い続けるのがあたりまえ。 どんなものも思い入れを上塗りしながら親から子へと受け継いでいく。古い建物を大事に残す。すぐそばで育つ野菜やハーブを活かして料理をする。鶏を飼って、その卵でパスタを作る。家庭の味を守り続ける――。「そういうことの積み重ねが文化になるとわかったんです」
帰国し、富山市内に前身となる「トラットリア ヴィバ ラ ヴィータ」を構えたのは 2002 年のこと。店名はイタリア語で「健やかな暮らし」を意味します。やがて、かねてからの夢と志を理解してくれる建築家・濱田修さんと出会い、小矢部でのレンストラン開業という夢を実現させたのです。

ここにあるものすべてに物語がある

建物の柱や梁、外観は元のまま。仏間と床の間はワインセラーに生まれ変わりました。「本来、床の間は客人のおもてなしの場所。ゲストをもてなすためのお酒のあるべき空間とも言えます。また、牧谷シェフの思いを知るにつけ、この建物の歴史を伝える仏間はできるだけそのまま残したかった」とリノベーションを手がけた濱田さん。「シェフの考え方はものごとの本質について考えさせられ、また、いろいろな分野への発展性も感じられてとても興味深い取り組みだと思います」
富山の店舗で20年以上使ってきた椅子はここでも現役。カウンターは補修して、大きなダイニングテーブルに変身させています。

スペシャリテはシェフが育てた野菜の一皿

料理で使う野菜や米は、レストランから少し離れたところにある田畑で無農薬と有機肥料で、牧谷シェフが丁寧に育てています。氏が富山市からこの畑に通い続けて10年以上。「ラディッキオやアーティチョークなどのイタリア野菜は、かなり本場の味に近づいてきています」と自信をのぞかせます。 この日のランチの前菜は、新タマネギ、オクラ、花ズッキーニ、トマト、パプリカなどに新ニンニクのピューレと手作りのリコッタチーズを添えた鮮やかな一皿。個々に調理された野菜それぞれの食感の楽しさと素材そのものの甘みがなんとも印象的。コースには、氏が料理を学んだイタリアとスロべニアの国境近くの街で親しまれている郷土料理も組み込まれます。

薪焼き料理で地元産肉の力強さを実感

メインディッシュは薪焼き料理。焼き上げる過程で煙をまとった「めるへんポーク」は独特の香味で魅了します。 「稲葉メルヘン牛」など小矢部の特産肉のほか、寒い季節には魚の燻製も予定しているとか。ワインやビール、 ウイスキーのセレクトも地元・富山の「手仕事の味」にこだわっています。

宿泊で “田舎時間” に浸り、地域の食文化を味わい尽くす

1 日 1 組限定で宿泊も可能です。夕食はもちろん北イタリア料理のフルコース。ダイニングスペースを貸し切っ た状態で楽しめます。食後に 2 階の客室でワインと燻製の盛り合わせとともにディナーの余韻に浸るひととき は格別です。
アメニティやナイトウェアもメイド・イン・富山。富山県産のはとむぎのぬか油をアップサイクルするブラン ド「ネルコッチャ」のものを用意しています。
翌日の楽しみはなんといってもシェフお手製の和朝食。天日干しの自家栽培米に梅干し、ニシンのこんか漬けや豆腐の昆布〆など、当地で古くから親しまれてきた味覚が並びます。

シェフの理想が富山の新たな景色を作る

古い建物を活かし、その土地ならではの作物とともに田舎らしさをとことん楽しめる場所を作りたい――夢に思い描いたレストランを郷土で形にし、手塩にかけて育てた野菜でとっておきの料理を振るまう牧谷シェフの 笑顔から、日々の充実感が伝わってきます。「これから山羊を迎える予定です。山羊のミルクでチーズも作って みたいですね」
牧谷シェフの理想郷はさらに進化しそうです。

わたしのとっておき|坪谷菜摘さん 、堀田裕子さん、イナガキヤストさん

ヒスイ海岸で朝食をとるのがルーティンに

27 歳までずっと東京に住んでいましたが、おしゃれなカフェに行って流行りのスイーツを食べる! というような、 いわゆる “東京っぽい” ことにはあまり興味がなくて(笑)、それより、電車を乗り継いで奥多摩にソロキャンプ に行くなど、とにかく自然に触れるのが大好きだったんです。仕事仲間のなかにはコロナ禍に地方に移住したり、 2 拠点生活を始めたりする人が増えて、私もいっそどこかに移住しようかなと本格的に考え始めました。

富山県の移住サイトを見て朝日町を知り、窓口にいろいろ相談をしてみました。元々企業の SNS 運用を請け負って いた私の経歴を知って、「情報発信できる人をちょうど探していたので一緒にやりませんか?」と声を掛けて もらい、地域おこし協力隊に着任することになりました。民泊のサービスを始めたのは移住してしばらく経った 2023 年の 3 月。徐々に利用者も増えて、今はほとんどが県外からの宿泊客です。

移住して間もなく、ヒスイ海岸で朝食を楽しむことがルーティンになりました。自宅から車で 10 分ほどの場所 にこんな美しい自然があって、透き通るほどのきれいな海を眺めながら静かにゆったり過ごせるなんて、東京 にいた頃には考えられないくらい贅沢な時間です。

ホタルイカの燻製と泊駅そばのカフェがお気に入り

ヒスイ海岸のすぐそばに加工場がある「愛場(あいば)商店」のホタルイカの燻製は、富山土産として一番の おすすめです。ホタルイカの肝の部分がそのまま残っているのが特徴で、トロリとした食感と独特の風味が楽しめ、ビールや富山の地酒のアテにもぴったりです。
ちょっと一息入れたい時に立ち寄るお気に入りのお店は、泊(とまり)駅の近くにある「ハーブと喫茶 HYGGE (ヒュッゲ)」。友達とランチタイムにカレーを食べに行ったり、午後に季節のデザートを食べに行ったり。 どのメニューも手づくりで本当においしい。古民家をリノベーションしたくつろげる空間で、地元のみんなに愛されているお店です。

「富山市ガラス美術館」で気持ちをリセット

富山には、「富山ガラス工房」「富山ガラス造形研究所」「富山市ガラス美術館」の 3 つがあって、それぞれが 一体となって「ガラス文化を盛り上げよう」と、さまざまな取り組みを行っています。以前から “モノが生ま れる環境” に憧れを抱いていて、ガラス工房で働くチャンスに恵まれ、今はショップの展示や企画などを担当 しています。これだけガラスの魅力発信に力を入れている都市は世界的にも珍しいようで、国内外から注目 されています。

「富山市ガラス美術館」には、仕事の会議や展覧会の鑑賞で定期的に来ています。ガラス美術館が入っている 「TOYAMAキラリ」の空間が好きです。6階までつながる吹き抜けは圧倒的な開放感があって、見上げた時にいつも気持ちがリセットされるというか、スーッと落ち着く感覚があるんです。 仕事柄、毎日のようにガラスには触れていますが、この空間に展示されている作品を見ると、違った視点から の気づきがあって、たくさんの刺激を受けることができます。

子どもたちと来るときは、同じ建物内の図書館を利用することが多く、いろいろなシーンでお世話になって います。2~4 階のパブリックスペースには、富山ゆかりのガラス作家による作品が並んでいます。常設のコレクション展や、毎回新たな作品に出会える展覧会も本当に楽しみにしています。

大好きなます寿しもガラスの器と一緒に楽しむ

自宅でもガラスのお皿や花器を愛用しています。日々の食事の時、大好きなお花を生ける時に、そこにきれいなガラスがあることで楽しさが2倍にも3倍にもなる。生活に彩りを与えてくれる大切な存在なんです。
大好きなます寿しをいただく時も、自宅ではガラスの器を使っています。お盆やお正月といったイベントに食べる方が多いと思いますが、私はとにかくます寿しが大好きで、コンビニでもついつい探してしまうほど。 いろいろなお店のます寿しを食べ比べをすることが今後の楽しみです。近い将来ぜひ、「ガラス × ます寿し」 のコラボも実現できればと思っています。

朝日も夕日も美しい! 愛すべき内川エリア

富山には魅力的な風景が溢れています。普段生活している場所から、いつでも雄大な立山連峰が見られるというのも富山ならでは。海越しに見る立山連峰は特別で、このように海と山を一緒に見ることができるスポットは世界でも数ヶ所しかないそう。当たり前じゃない景色が日常に広がっているというのは、本当に幸せだなと感じます。

僕は射水市の生まれで、家族と一緒に今もここで暮らしています。地元で特に好きな場所は内川エリア。川岸 に漁船が停泊する風景が、イタリアのベニスに似ているので「日本のベニス」とも呼ばれています。長男が小学校に入る前からよく家族で遊びに来ていて、子どもたちの成長とともに、写真をたくさん撮った思い出の場所。県外の友人たちに内川の写真を見せると、必ずと言っていいほど「ここに行ってみたい!」と言われるので案内することも多いですね。

内川エリアは東西にわたって横長の形をしていて、朝日も夕日も見える。どの時間に来ても素敵な写真が撮れる貴重なスポットです。夕日を見た後に、川沿いを散歩して近くのバーで一杯、というのも内川ならではの楽しみ。 小さい頃と変わらず静かに時間が流れていて、ノスタルジックな雰囲気を感じられる、僕にとっては大切な場所です。

地域の人に愛される「野村屋」のおやつに夢中

昔から地元の人が通うおいしいお店もいくつかあります。最近よく立ち寄るのは、川沿いにある「野村屋」。50 年以上続く和菓子屋さんで、「富山ブラックどらやき」はおみやげにもおすすめです。初めて食べた時から、甘味としょっぱさが絶妙にミックスされた醤油バター味にハマってしまって、内川に来るたびに買って帰ります。 他にも、葛(くず)ゼリーにフルーツがたっぷり入ったアイスバー「涼しん棒」など、季節ごとのスイーツもいろいろあるので、ぜひ立ち寄ってほしいですね。

とやま旬だより|黒部峡谷トロッコ電車

秘境を走る名物トロッコで
迫力満点の大自然を満喫


日本で最も深く、大きな峡谷として知られる黒部峡谷を縫うように走るトロッコ電車では、富山でも指折りの絶景を楽しめます(2024年シーズンまでは、宇奈月駅~猫又(ねこまた)駅間で折り返し運行中)。
宇奈月駅から出発し、ダム湖に浮かぶヨーロッパの古城を思わせる新柳河原(しんやながわら)発電所などを 眺めながら揺られること約25分。黒薙駅(くろなぎえき)の周辺にはお楽しみが大充実。遊歩道からはフォトジェニックな後曳橋(あとびきばし)を眺めることができます。美肌の湯として評判の黒薙温泉には広さ約28畳もの大露天風呂があり、日帰り入浴も可能(年内の営業は11月下旬まで)。また、10月5日(予定)からは猫又駅でも降車可能となり、黒部峡谷の山並みを楽しめます。10月中旬から11月にかけての紅葉シーズンもおすすめ。

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