【ひととやまvol.3】魚、水、米。富山のおいしさが詰まった寿司-1

富山の「人」「つながり」にフォーカスし、そのバックストーリーを通じて富山ならではの魅力をお届けする「Hitotoyama」(ひととやま)。“とやまの人の、好きなとやま” を探す旅に出かけてみませんか?

特集:旅の音|富山のおいしさが詰まった一貫を頬張る

立山連峰の雪解け水によって育まれるおいしい米と、種類豊富な富山湾の海の幸。その魅力を余すことなく楽しむなら、なんといっても寿司。昭和9年に創業し、三代に亘って愛されてきた人気店「蛇の目寿し」が語る「富山の寿司」とは。
 

三代に亘って続く貴重な一軒
 

扉を開けると和やかな雰囲気の中、カウンター越しに店主の桶谷篤志(おけたに・あつし)さんが、にこやかに迎えてくれます。
富山市奥田本町にある「蛇の目寿し」は、金沢で修業をした初代が、のれん分けによって昭和9年に総曲輪町(そうがわまち)で創業。現店主の桶谷さんは三代目にあたります。「富山県で最初にできた寿司店と父から聞いています」。戦時中、初代が出征し、一度店を閉めましたが、二代目の父が復興させ、後に当地に移転しました。この町で、三代に亘って受け継がれてきた貴重な寿司店の一つです。

昔ながらの寿司店の形を大事に
 

約20年前に改装していますが、もとの店舗から変わらないのは一枚板のカウンター。頭上には小さな屋根をこしらえ、屋台から始まったという寿司店の起源をいまに伝えています。ユニークなのは、常時つけ台の下に井戸水が流れており、手を洗えるようになっていること。にぎりを手でつまむため、かつてはこのようにカウンターに水場を設けている寿司店は多かったようですが、いまでは数少なくなっています。水の流れる音に耳を傾けながら、リズミカルに寿司を握る桶谷さんの手元を眺めて一貫を待つ時間に心が浮き立ちます。
 

昼夜人気の富山湾鮨で富山の醍醐味を満喫
 

魚はもちろん、地物がメイン。毎日、中央市場でその日の一番いい状態のものを目利きして仕入れます。桶谷さんは父の元で寿司のいろはを学んだと言います。寿司だけでなく、和食全般のことを知っておかなければと、かつては京都や金沢の和食店でも学んだそう。
昼はちらし寿司、夜はおまかせで、その日の料理をつまみに地酒をゆっくり味わいながら寿司も楽しむ常連客が集います。
昼夜問わず親しまれるのが「富山湾鮨」。旬の地魚と県産米のシャリで握る10貫と、富山らしい汁物がついたセットで、富山の寿司の醍醐味を存分に味わうことができます。

 

富山の寿司がおいしい理由
 

そもそも、富山の寿司には“おいしい理由”があります。立山連峰の雪解け水は熟した米を育て、地中でミネラルなどの栄養分をたっぷりと含み、浄化されて富山湾に流れ込みます。この河川水による表層部、対馬暖流が流れる中層部、海底谷を擁する深層部で構成されている富山湾は「天然の生け簀(す)」と呼ばれています。秋の高志の紅(こしのあか)ガニ、冬季の定置網漁で獲れる寒ブリ、春に漁が始まるホタルイカやシロエビなど、年間を通じて豊富な魚種が水揚げされるのです。
 

新鮮な魚がもっともおいしくなるタイミングを見極める

「変わったことは何もしてないですよ」と桶谷さん。寿司も料理も基本に忠実に、がモットーです。「酢や塩で締めたり、茹でたり、寝かせたり。冷蔵庫のない時代に誕生した江戸前寿司は、日が経ってもおいしく魚を食べさせるためにさまざまな工夫をするもの。でも、富山の人は朝獲れの新鮮な魚のおいしさを知っているから、魚そのもののおいしさを感じられる寿司が好きだという人が多いし、そういう寿司を握れるといいのかなと」。かといって新しい魚は新鮮ゆえに身が縮んでしまうものもあり、おいしさを感じにくいものも。「その状態をほんの少し超えると、よりおいしくなる」。そこを見極めて仕込み、寿司に仕上げます。コシヒカリのシャリと、鰹節と昆布の出汁を独自にブレンドして旨みをプラスした醤油の味わいが、口のなかでネタのおいしさをいっそう引き立てるのを実感できます。
 

楽しく食べるための空間作りにも気を配る
 

「『蛇の目寿し』で味わう水ダコは世界一」と語るのは、同じ地区でともに界隈を盛り上げてきた「みずの酒店」店主の水野さん。「水ダコのやわらかな口当たりとほどよい弾力、シャリとのバランス、ほんのり後口に香る醤油の風味がたまりません」。毎回必ずおかわりをするネタなのだそう。「その日のおすすめの魚について説明してくれたり、一緒に世間話をしたり。おいしい寿司を握ってくれるだけじゃなくて、楽しく食べさせてくれるのが、なんといっても『蛇の目寿し』の魅力」。初めて来店する人でもリラックスできる心地よさと親しみやすさが空間にあふれています。
これからは、ブリや香箱がに、白子など、ますます魚介がおいしくなる時期がやってきます。夜には天ぷらや鍋、茶碗蒸しなどの料理も登場し、富山の魚介を心ゆくまで楽しめます。

蛇の目寿し
富山県富山市奥田本町2-10
T/076-431-7722
営/11:00~14:00 / 17:00~22:00
休/木曜
P/8台
アクセス/北陸新幹線富山駅から富山地方鉄道 下奥井駅下車、徒歩約5分。

 

わたしのとっておき|天野陽史さん

「新と旧が混ざり合うバランス感がこの街の魅力。
 昔栄えた宿場町に、少しずつ活気が戻っている」

 

ノスタルジックな通りに新店が次々と

瀬羽町通りはかつて宿場町として賑わっていましたが、時が経つにつれて空き家や空き店舗が増え始め、人通りが徐々に減っていったと聞いています。しかしここ5〜6年ほどで新しいお店も増え始め、少しずつ活気が戻ってきているように感じます。


以前から好きで通っていた古道具の「スヰヘイ」さんがこの通りに移転され、お店の雰囲気の良さに惹かれていました。店を始めるにあたり物件を探していたとき、運良く「スヰヘイ」さんの向かいに空き家が見つかったので、この場所で店を開くことにしたんです。その後も雑貨屋さんやお花屋さん、パン屋さんなど、新しい感覚の店が続いてできています。今後もまだ新しいお店が増えていくような雰囲気もありますね。

昔の建屋や看板をそのまま活用するお店が多く、新旧がバランスよく混ざり合っているところが、瀬羽町通り独自のセンスを生み出している気がします。土日は若いお客さんが多く、少しずつ街の雰囲気も変わってきました。元々の住人の方や、“古本の聖地”とも言われる東京・神保町に通い詰めていたというコアなおじいさんも来てくれて、刺激的な日々を送っています(笑)。

 

海がすぐ近くにあることに日々感激

この場所を選んだ理由のひとつが、海がすぐ近くにあること。毎日、仕事帰りに海に向かって歩くと、夕日が海に沈む光景が広がっていて、言葉にならない感動があります。振り返ると剱岳(つるぎだけ)や立山も見えて、本当に素晴らしい景色だと思います。改めて、富山の自然の美しさに惚れ惚れしますね。

 

休憩中に立ち寄る癒しスポット

パン屋の「hope low carb bakery」さんは、仕事の合間に立ち寄る行きつけのお店です。大豆粉がメインの「lowcarb低糖質パン」は、他では食べたことのない食感とおいしさ。定番の「ガリベーコン」や、季節の野菜や果物を使ったサンドやパンも絶品です。ベンチでコーヒーを飲みながら、店主の竹島さんとおしゃべりするのが楽しみ。それが、僕にとっての大切なくつろぎの時間になっています。



hope low carb bakery
富山県滑川市瀬羽町1864

 

わたしのとっておき|大島恵さん

「初めて食べた本場の海鮮丼の味にびっくり。
 魚津の魅力を全国の人たちに伝えたい」

 

魚津の旬の味が楽しめる「海風亭」

結婚が決まって、主人の地元・魚津を訪れたときに連れてきてもらったのが「海風亭」でした。5代目の店主、美浪呂哉(みなみ ともや)さんと主人は幼馴染ということもあり、7年半前に富山へ移住してからは、家族ぐるみで仲良くさせてもらっています。
茨城県出身の私にとって「海風亭」の海鮮丼を初めて食べたときは、本当に衝撃的でした。今まで食べた海鮮料理のなかでも一番おいしくて、さらに値段も東京では考えられないほどリーズナブル。10種類以上の旬の海の幸が入っているのに、1,000円ちょっと。そのコスパの高さにびっくりしました。
魚津の新鮮な魚を食べられる代表的なお店なので、県外から友達が家族で遊びに来たときなどには必ずと言っていいほど連れていきます。ホタルイカやバイ貝はもちろん、グルメ漫画の「美味しんぼ」にも紹介された有名な「げんげの竜田揚げ」など、ここならではの富山の味を堪能できる特別なお店です。子連れでも温かく迎えてくれる雰囲気もとてもいいんですよ。



海風亭 
富山県魚津市釈迦堂1-13-5

地酒のおいしさは、“冷や”で堪能

元々お酒好きの私。魚津で魚の本当のおいしさを知ってからは、日本酒がさらに大好きになりました。地酒はどれもおいしいんですが、今はまっている日本酒の一つが、魚津酒造の「北洋」です。飲み方は“冷や”一択。おちょこだとすぐになくなっちゃうので、湯呑みでゆっくりと味わっています(笑)。

 

全国の親子に魚津の魅力を発信 

私が運営する「ココママ」では、ファミリーワーケーションという活動を行なっています。全国から応募してくれた親子が魚津に一週間滞在して、親はテレワーク、子どもたちは地元の保育園に通い、夕方やお休みになると漁港のそばでサビキ釣り(疑似餌を使った釣りのこと)をして一緒に魚をさばいたり、大人同士でお酒を飲んだりしています。魚津の海は、えも言われぬ美しさがあります。晴れた日は、夕焼けで空も海も赤く染まって幻想的。その魅力をたくさんの人に知ってもらう活動を、これからも続けていきたいと思っています。 

わたしのとっておき|渡邉克明さん

「自然が魅せる美しい色は、和菓子作りに欠かせない
 僕にとっての貴重なアイデアソース」

 

さまざまな表情を持つ癒しの場所

「清流の里」として知られる「宮島峡」は、僕が小さいときから来ていた思い出の場所でもあり、折に触れ、訪れる場所の一つです。今日はわりと穏やかですが、雨が降った次の日は水量も多く、すごくダイナミックな景色に変わります。自然の美しさがあふれていて、「五郎丸屋」の「T五(ティーご)」というお菓子のリーフレットを作るときに撮影場所として選びました。
ここから一の滝、二の滝と順に上がると、一番上にダムがあります。森林と水が織りなす壮大な景色が広がっていて、圧倒されるような美を感じます。中学生のころは、同級生たちと一緒にまだ薄暗い時間に家を出て、自転車でダムの奥までよく釣りに来ていました。明るくなったころにダムを眺めながら帰ってきたことを思い出します。
和菓子を作るときにも、やはり自然の影響は大きいかもしれません。作られたような人工的な色は使わずに、自然の景色にある色を再現することを意識しています。ガラス作家さんとのコラボで作った「きせつのさがしもの」という新商品は、琥珀糖をベースに季節ごとにカクテルのように色や味を変えて作っています。自然の美しさや季節の移ろいを、和菓子を通して表現する。そのために、何気ない小矢部の自然の景色は、僕の貴重なアイデアソースになっています。

 

小矢部牛と一緒に楽しみたいクラフトビール

石動駅(いするぎえき)近くにある「マルカッサン」は、スタッフとよく訪れるお気に入りのビストロです。いつもオーダーする小矢部の「メルヘン牛のコース」は、お肉がすごくやわらかくてやさしい味。お店オリジナルの「しあわせ運ぶはと麦ビール」の生は、ここでしか味わえないので、ぜひ飲んでみてほしいですね。



おやべの小さなビストロ マルカッサン
富山県小矢部市石動町5-31

 

お酒のアテに最高の「糀漬け」

地元でも人気の「きばや食品」の「糀漬け」は、県外に行くときなどにお土産として持って行くことが多いです。何種類かあるなかでも定番は、にしんの糀漬け。なかなか濃い目の味付けではありますが、発酵食品なので体に良い要素もあると思います。お酒好きの方は、一度食べたらきっと手が止まらないですよ。



きばや食品
富山県小矢部市石動町6-6


 

とやま旬だより|入善の牡蠣

「海洋深層水仕込み」の新鮮な牡蠣が一年中食べられる!

「にゅうぜん街中オイスターロード」と呼ばれるエリアがあるほど、入善町(にゅうぜんまち)にはおいしい牡蠣が食べられるお店がたくさんあります。地元以外にも全国各地から新鮮な牡蠣が集まり、海洋深層水で蓄養・浄化しています。雑菌が少なくミネラルたっぷり、そして常に低温で安定している海洋深層水で体内を浄化することで、安心・安全でプレミアムな牡蠣に育つのです。
11月にお店に並ぶ牡蠣は、播磨灘産や広島産がメイン。時期によって全国約50産地から集まるいろいろな味を楽しめるのも入善町ならではの魅力。生牡蠣に牡蠣フライ、牡蠣鍋、蒸し牡蠣などなど、バリエーション豊富な牡蠣料理を食べに、入善町に出かけてみませんか?

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