【ひととやまvol.4】木彫りのぬくもりに触れられる井波へ-1

富山の「人」「つながり」にフォーカスし、そのバックストーリーを通じて富山ならではの魅力をお届けし、“より深い観光”を提案する「Hitotoyama」(ひととやま)。“とやまの人の、好きなとやま” を探す旅に出かけてみませんか?
 

旅の音:木彫りのぬくもりに触れられる井波へ

日本有数の木彫刻の産地、南砺市井波(なんとし いなみ)に降り立つと、ふわりと清涼感のあるいい香りに気付きます。その源は、井波彫刻の主な材料であるクスノキ。さらに「コンコン」と小気味よく響く木槌の音が、心満ちる旅へと誘います。
 

「Bed and Craft」を拠点に井波を満喫
 

石畳のメインストリート・八日町通りには彫刻工房が立ち並び、瑞泉寺(ずいせんじ)を核とした歴史を感じさせる町並みも知られる井波。近年はカフェにパン屋さん、コーヒーロースタリーにブリュワリーなどスタイリッシュなスポットが次々と誕生し、多彩なクリエイターたちも全国から集まってきています。その吸引力となっているのが、界隈に6棟の宿泊施設を展開する「Bed and Craft」。特別な空間での宿泊が叶うだけでなく、「職人に弟子入りできる宿」として井波で活躍する職人によるワークショップをコーディネートしてもらえるほか、「町のコンシェルジュ」としてグルメスポットや見どころなども紹介してもらえるとあって、井波を満喫するのにうってつけの拠点として親しまれています。

 

リノベーション空間に漂う町の歴史と文化
 

6つの宿泊棟はすべて1組1棟貸し切り。建具屋や料亭跡などの古い建物を活用し、その名残をほどよく残しつつ個性豊かにリノベーションしています。また、各棟で、彫刻家をはじめとする井波のさまざまなアーティストとのコラボレーションが実現しているのも興味深いところ。当地の歴史を感じ、作品を通じて地元作家のエネルギーにふれる特別な滞在が、旅を印象づけます。
「Bed and Craft」はこうしたユニークな試みと快適性が評価され、この夏、アジア初の「ミシュランキー」のホテルセレクションで「セレクテッド」に選出されました。

 

心満たされるアーティストとのふれあい
 

工房を訪ね歩く楽しさも井波の大きな魅力の一つ。「木彫・漆 トモル工房」では、木彫刻家の田中孝明(こうめい)さんと漆芸家の田中早苗さんが迎えてくれます。アトリエでは「Bed and Craft」を通じて孝明さんによるスプーン作りや早苗さんによる漆のワークショップも体験可能。普段、なかなか話す機会のない職人とのコミュニケーションによって、作品の世界をさらに深く知る喜びも感じることができるでしょう。

 

井波彫刻の創作現場で伝統を体感
 

「Bed and Craft」では、明治から代々、井波彫刻師の歴史を紡ぐ「加茂彫泉堂(かもちょうせんどう)」の加茂 薫さんによる版画作りの体験もコーディネートしてもらえます。版画作りで彫刻の楽しさを知るだけでなく、加茂家の代々の作品も見学できるほか、200種類もの鑿がずらりと並ぶ加茂さんの創作の場を間近に見ることもできます。
版画作りは、板に下絵をトレースし、5~10本ほどの彫刻刀を使い分けながら彫り進めます。色を載せて紙に写せば、年賀状などのオリジナルポストカードが完成。美しい中庭を眺めつつ、彫刻刀で板を彫る音に耳を傾けているうちにいつしか夢中に。3時間の体験時間はあっという間に過ぎていきます。

 

蔵のレストランで南砺の美味に酔いしれる
 

食のひとときでも当地の文化をしっかりと味わえます。路地裏の古い蔵跡を改装した「nomi」では、長崎・五島列島出身のシェフが腕をふるいます。木彫刻の際に出る木くずを使用した燻製料理を井波彫刻の器で提供。地元の食材のおいしさを丁寧に引き出した香り豊かな品々が評判です。
 

井波の思い出を香りに託して
 

井波のおみやげに香りを選んでみるのもよいでしょう。旅行業の経験から「土地と香りの結びつき」に着目したアロマブレンドデザイナーの中臺雅子(なかだい みやこ)さんによる「CANO(かの)旅と香りの研究所」では、花や木、ハーブ、スパイスなどから抽出した38種類の精油を調合し、さまざまな香りを提案するほか、井波彫刻の職人と共同して作った香合など、旅先でも香りを楽しめるアイテムを販売しています。
一気に人が移動しなくなったコロナ禍に、「遠く離れた人たちにも香りを届けることで井波を感じてほしい」との思いからスタートしたと語る中臺さん。ワークショップでは記憶に訴えかける香りのレシピ作りをサポートしてくれます。

 

暮らしにぬくもりをもたらす逸品に出合う
 

ショップギャラリー「季ノ実」には、器やアクセサリー、食品など、さまざまなジャンルの職人が集まる井波ならではのアイテムが充実しています。なかには、前出のレストラン「nomi」でも使用している「IPPA」の器や、「Bed and Craft」のチェックインラウンジに飾られている作家・前川大地さんの雲をモチーフにした井波彫刻の作品など、町のあちらこちらで目にした作品も。旅を終えた後も井波の風景を思い起こさせてくれるものばかりです。
 

出会いと発見に満ちた井波で旅の醍醐味を実感
 

「『Bed and Craft』は井波という町全体がホテルであると考えています」と語るのは、コンシェルジュの白樫明士(しらかし あきひと)さん。そこに暮らしているかのように町を歩いて、当地の魅力的な人々やカルチャーに触れることに何より大きな感動がある——「Bed and Craft」には個性的な宿泊棟にこもる心地よさももちろんありますが、そんな旅の醍醐味も実感させてくれます。

Bed and Craft
(チェックインラウンジ)
富山県南砺市本町3-41
0763-77-4138

nomi
富山県南砺市本町3-41
0763-77-4163

CANO 旅と香りの研究所
富山県南砺市本町3-41
info@cano-caori.com

※来店・ワークショップは予約制。

季ノ実
富山県南砺市山見1001
070-8463-0619 
※平日の来店は予約制。

わたしのとっておき|種昻 哲さん

「田んぼのなかを走る電車、それを見守るようにそびえる立山連峰。 

 昔ながらの景色が息づくのどかな街」 

自然の中で過ごすくつろぎのカフェ 

独立して富山市内に事務所を構えてからは、生まれ育った上市町やその隣の舟橋村からはちょっと離れた生活を送っていました。ただ、ここ最近になって、仕事で上市町周辺のプロジェクトに携わることが続き、自分のふるさとに向き合う機会も増えてきました。 

“保育料ゼロ”の学童保育と隠れ家的なカフェ「noki fork cafe」を併設した「fork toyama」もその一つ。越中舟橋駅前にある古民家をリノベーションした建物です。 

カフェは、大きな木々が繁る自然の庭(子どもたちの遊び場)を眺めながら、木漏れ日の中で心地よい時間を過ごすことができる場所。フードやドリンクはどれもおいしいのですが、特にお気に入りなのが「ガッショーサンド」と「豆苗のサラダ」です。いろんな富山県産のフルーツを使ったフレッシュジュースもおすすめです。 

一旦離れて、改めて地元の魅力を見つめ直してみると、小さい頃から慣れ親しんでいた田んぼのなかを富山地方鉄道の電車が走る風景がいまも残り、都会にはないのどかな時間がとても新鮮に感じられます。さえぎる建物がない分、どこからでも立山の剱岳(つるぎだけ)がはっきりときれいに見えて、ついつい車を停めて写真を撮ってしまいます。 

 

fork toyama
富山県中新川郡舟橋村竹内325



国内外の無垢材の魅力に触れる 

「fork toyama」から車で3分ほどのところにある「松田木材」も僕にとってはなくてはならない場所。代表の松田さんとは、仕事でアイデアが浮かんだ時や逆に悩んだ時に、一緒に倉庫で木を手にしながら、「こんなものが作りたいんだけど……」と相談して新しいものを作っていくような間柄です。 

富山県産材をはじめ、国内外の木材で作ったフラワーベースやカフェトレーなどが買えるショールームもあり、一般の方にもオープンな場所となっています。そこで年2回開催される「ウッドクラフトマルシェ」では、いろいろな作家の作品や食も楽しむことができ、いつも多くの人で賑わいます。木の魅力を身近に感じることができる素敵なスポットです。 

松田木材
富山県中新川郡上市町放士ヶ瀬1001

松田木材ショールーム 
富山県中新川郡舟橋村舟橋174 
(オープンは第2土曜日13:00~17:00 )

わたしのとっておき|DJ CHIGONさん

「オフの生活は、富山グラウジーズ一色。 

 いつかは“盛り上げる側”になりたい」 

ハマった理由は、エンタメ性の高さ 
 

スポーツ観戦にはあまり縁がなかったんですが、たまたま映画「スラムダンク」を見た後にワールドカップが始まって、私の中で少しバスケ熱が湧いてきた時に、軽い気持ちで富山グラウジーズ(富山市をホームタウンとするプロバスケットボールチーム)の試合を観に行ったのがハマったきっかけでした。実際に体育館で見ると、距離の近さに驚きました。ベンチ近くならコーチや選手たちの白熱した表情までしっかり見えるし、“ブースター”と呼ばれるお客さんたちの熱量もあって一瞬で惹き込まれました。

試合前にはダンスチームのショーもあり、音楽も大音量で流れていて、照明の演出も含めてまるでライブイベントのような盛り上がり。音楽のセレクトも流行っている曲をしっかり押さえていてセンスを感じます。DJとして、そうした演出にもすごく刺激を受けます。いつかは、チームの専属DJになって会場を盛り上げる側になれたらなと夢見ています(笑)。

 

会場が富山駅から近く、界隈をフレキシブルに楽しめる 
 

バスケットボールはゴールにボールが入れば得点になるのでわかりやすく、ルールにそれほど詳しくない人でも十分に楽しめるのもいいですよね。富山グラウジーズはチームウェアのセンスの良さも魅力。クローゼットの中は、チームカラーの赤のアイテムがどんどん増えています(笑)。 

ホームの富山市総合体育館は、富山駅から歩いて5分というアクセスの良さ。天候も季節も関係なく楽しめる屋内スポーツなので、シーズン中はいつでも安心して観に行けるのがうれしいですね。試合後には駅前でそのまま仲間と打ち上げ。勝った時は祝勝会、負けた時は反省会と称して、半日たっぷりグラウジーズを満喫しています。県外からいらっしゃる方には、土曜日の日中は富山観光を楽しんで、夜にはバスケ観戦もして、翌日は富山のおいしい食事を満喫して帰る、そんな旅のプランもおすすめです。 


 

富山市総合体育館 
富山県富山市湊入船町12-1 
 

富山グラウジーズ 
https://grouses.jp 

わたしのとっておき|平野 暉さん

「カウンターでおでんとワインを楽しむ。 

 そんな粋な時間が好きなんです」 

「50年の出汁」が染みた庶民派おでん 

高校までは黒部で暮らしていて、大学進学を機に高岡に来ました。その頃のごちそうといえば唐揚げ一択でしたが、そんな僕におでんを食べる楽しみを教えてくれたのが「おでん百福(ももふく)」です。もともとワインカフェ「floraison」の店主をしていた炭谷恵子さんが、80年続くおでん屋さんを引き継いだのが4年ほど前。僕たちの周辺では、かなりのニュースになりました。 

カウンター席のみなので、一人で来ても出張や観光で県外から来る「はじめまして」のお客さんとも会話が弾みます。ここでは歴代、富山大学の芸文(芸術文化)学部の友達や後輩が働いているので会いに来る楽しみもあります。以前はおでんをわざわざお店で食べるという概念がなかったけれど、「百福」で初めておでんを食べた時は少し大人になったような気がしました。いまでは僕にとってすごく心地良い場所の一つになっていて、ここで過ごす時間に粋を感じます。 

50年以上継ぎ足している出汁が染み込んだおでんは絶品。定番の大根、豆腐はマストですが、すすたけや赤巻きかまぼこ、春菊などもおすすめ。食べて飲んで3,000円ほどという庶民的な価格もうれしくて、つい通ってしまうんです。 

そして、ワインソムリエの恵子さんがセレクトした“おでんに合う白ワイン”が楽しめるのも「百福」の魅力。長野の「五一わいん」はフルーティーですごく飲みやすくて、大好きなワインのひとつです。 


おでん 百福
富山県高岡市片町1145

 

日常の風景に溶け込む高岡大仏 

高岡に住みはじめて約10年。中心街もすごくコンパクトで遊びやすいし、アーケードがあるので、雨の日に傘を持たなくてもほぼ濡れずに歩くことができるのもいいところ。 

観光名所の高岡大仏は、僕の日常に溶け込んでいます。去年までは毎日大仏の前を通って出勤していたし、飲みに行く時も必ず前を通ります。「こんなところにこんなに大きな大仏が!」と初めての人はびっくりするほど、なんでもない路地にいきなり現れるのでその意外性もいいですよね。デザインをイメージしたり、ラップを考えたりしながら、いつも大仏の前を通っているなと思うと、もしかしたら僕は大仏から力をもらってるのかもしれませんね(笑)。 
 

高岡大仏 
富山県高岡市大手町11-29 

とやま旬だより|ひみぶりフェア

ひみぶりフェア 

“富山湾の冬の王者”を食べ尽くそう!  

「ひみぶりフェア」で寒ブリ三昧 
 

冬の富山に来たら絶対に外せない! 富山湾の冬の王者「氷見の寒ブリ」が思う存分味わえる「ひみぶりフェア」が今年も12月1日(日)からスタートします。氷見市内の旅館や民宿、ホテル、割烹、寿司店、居酒屋など、参加店それぞれが自慢の寒ブリ料理を用意。脂ののったぶりを、刺身やしゃぶしゃぶ、ぶり大根に焼き物、寿司など、盛りだくさんのメニューを楽しめます。 
例年、12月から1月が旬のピークで、ぶりの大漁シーズンは2月まで。氷見ならではの新鮮な寒ブリに舌鼓を打てるこの機会をぜひお見逃しなく。 
さらに、2025年1月19日(日)には、ぶり尽くしを楽しむイベント「ぶり・鰤・ブリづくし」も開催予定。人気の寒ブリ料理をたっぷり楽しむなら、早めの予約がおすすめ。この冬、氷見でぶりの絶品料理に酔いしれてみませんか? 

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