【ひととやまvol.6】昔もいまも愛される とやまの餅カルチャー-1

富山の「人」「つながり」にフォーカスし、そのバックストーリーを通じて富山ならではの魅力をお届けする「Hitotoyama」(ひととやま)。
“とやまの人の、好きなとやま” を探す旅に出かけませんか?

 

旅の音:昔もいまも愛される とやまの餅カルチャー

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富山県は1世帯あたりの餅に対する年間支出金額が全国でもトップクラス。日本有数の米どころであり、もち米の最高級とされるブランド品種「新大正もち」の生産が盛んです。餅といえば、伝統を重んじる富山では昔から出産や新築のお祝い、天神様へのお供えなど、人生の節目や季節の行事に欠かせないものでした。現代は日常のおやつとしても定着しています。
近年は餅を取り巻く環境においても世代交代が進み、画期的な商品作りや新たな楽しみ方の提案などが注目されています。富山の餅カルチャーを進化させる「食彩工房たてやま」「お餅屋 源七(げんしち)」を訪ねました。

 

立山のふもとで続く寒餅(かんもち)作り
 

立山連峰がダイナミックに目の前に迫る富山県中新川郡立山町。のどかな田園風景が広がる一角で、30年以上にわたって寒餅作りを続けてきたのが「食彩工房たてやま」です。寒餅は、「かきもち」「かきやま」と呼ばれる富山の伝統的な米菓のルーツにあたる食品と言われています。寒さが最も厳しい時期についた餅を寒風にさらして乾燥させたもので、かつては主に農家の保存食として親しまれていました。現在は、富山の特産品として昔懐かしい味わいをいまに伝えています。
 

若き担い手たちが活躍
 

実は「食彩工房たてやま」では2024年に、担い手不足や作り手の高齢化などの問題から寒餅作り継続の危機が訪れました。そこで、農業や大工などの本業のかたわら、地元のイベント設営などで町を盛り上げる活動をチームで手掛けていた北野貴紘(たかひろ)さん、森本肇さんらに白羽の矢が当たりました。生産者として、加工場を持つことで広がる可能性を感じたと北野さんは言います。「最初はただ工房の設備を引き継いでもらえないかということだったんですが、工房のお母さんたちからは、寒餅作りは大変だからやめておけと言われて……。でも、全国から寒餅の問い合わせを数多くいただいて、ここではやはり寒餅を作るべきだと思ったんです」。こうして働き盛りの有志8名が、それまで工房を支えてきた地元のお母さんたちに一から作り方を教えてもらいながら寒餅作りを受け継ぐことになったのです。
 

世代の垣根を越えて
 

立山産のもち米「新大正もち」をはじめ、ヨモギや豆など餅に練り込む素材もほとんどが富山産。添加物を一切使わず、すべて天然のものだけで作ることにもこだわります。ついたばかりのやわらかい餅を型に入れて2日間かけて固めてから、厚さ5mm、縦5cm、横10cmの長方形に切りそろえて、10~15枚ほどずつ紐で縛って倉庫に吊るし、干します。約1カ月かけて、じっくり、ゆっくり干すことが肝心。早く乾きすぎると割れたりひびが入ったりすることも。逆に、あまりに乾燥が遅いとカビが生えてしまうのです。
干しあがったら「立山権現(たてやまごんげん)かんもち」の完成。工房やウェブショップなどで販売しています。トースターや電子レンジなどで温めると、もっちりするかと思いきや、サクサクとした食感がなんとも軽やかなおやつに変身。素朴でどこかやさしい風味が楽しめます。

 

餅から広がる新たな挑戦
 

寒餅のほかにも、毎月一日に「ついたちモチ」を県内のいろいろなスポットに出向いて販売したり、近隣のイチゴ農家とコラボレーションして、イチゴジャムと乾燥イチゴを練り込んだ新しい餅菓子を開発したりと、「食彩工房たてやま」ではさまざまなチャレンジが続きます。「餅にサツマイモや一味唐辛子を入れてもおもしろそうですよね。自分たちで作ったもち米もいつか使ってみたいと思っています。伝統的なアイテムだからこそ、新しい楽しみ方を考えていきたいですね」と北野さん。立山の文化をもっと深く知って、商品化につなげたいと意気込みます。
 

地域の人々に愛される昔ながらの「かいもち」
 

「ふわっ」「とろ~」と異なる食感が一つになった「芋かいもち」は、魚津市「源七」の名物。魚津、黒部、入善周辺では、古くはもち米に里いもを混ぜ込み、餡やきなこをつけて食べる「かいもち」が各家庭で親しまれていたとか。「源七」はその懐かしい味を残すべく1984年に創業。魚津産の「新大正もち」を当地の名水で炊き上げてこしらえた餅に、黒部産の丸芋を練り込んだ「芋かいもち」で全国にファンを広げています。
 

365日をハレの日に。海外旅行者にも広がる餅つきの楽しさ

現在、「源七」では二代目の窪田雅之さん・琴美さん夫妻と、次男の祐司さんが伝統の味を守りつつ、新たな取り組みで餅カルチャーを発信しています。注目されているのは、餅つき体験。6年前に改装した店舗の2階に臼と杵を用意し、餅つきを体験できるようになっているのです(事前予約制)。
「餅は正月のようなハレの日に食べるものというふうに思っている方は多いですが、365日をハレの日にしてほしいという思いから始めました」と雅之さん。琴美さんが臼の餅を手早く返したら、「はいっ!」という掛け声に合せて、つき手が杵を振り下ろします。どんどん呼吸が合っていくとリズムに乗って餅をつく楽しさにいつしか夢中に。できあがった餅はその場で餡やきなこをつけて味わえます。つきたてのコシの強さと豊かな味わいがたまりません。

 

「楽しさ」と「スペシャル」を追求する
 

アイデアマンの祐司さんによってスペシャルな商品も誕生しました。入善町で黒部の名水を生かして米や果物を栽培している「アグリゴールド矢木」の特別なイチゴだけを使った「苺チョコ大福」です。赤ワインの風味を生かした白餡がポイント。チョコ大福はこのほかメープルナッツを入れたものやバナナを入れたものなども用意。いずれも大福の固定観念を揺さぶります。
「芋かいもち」にパリッとした食感をプラスした最中(要予約)も祐司さんの発案で生まれました。餅につけるパウダーや、魚津の果物とのマッチングの開発など、「芋かいもち」のオリジナリティーと新しい餅の可能性を追求しています。これからもワクワクするような餅カルチャーを発信してくれそうです。

 

食彩工房たてやま
富山県中新川郡立山町金剛寺270    


お餅屋 源七
富山県魚津市六郎丸4531-1

 

わたしのとっておき|荻野 淳也さん

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富山の地酒のガチャでほろ酔い気分に。
足湯は“脱力スタイル”で楽しむのがおすすめ。

 

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エンタメ性もある“日本酒ガチャ”

東京から夫婦で移り住んできて6年。僕のブランドの拠点である黒部は、自然も海の幸も素晴らしいし、おもしろいスポットも多いですね。宇奈月温泉駅前にある「にぽん酒屋」はお気に入りの一つ。ここは富山の地酒が飲める“無人試飲場”で、東京の友人たちが富山に遊びに来た時には、まずはここに立ち寄って歓迎します。試飲機に入れるコインをまずガチャガチャで買うというエンタメ性とワクワク感も魅力です。一杯で一口分くらいなので気軽に飲み比べできて、ほろ酔い気分で旅を楽しんでもらえます。1種類ずつ試飲できるのですが、ちょっぴりお得な3種類の試飲を選ぶことが多いかな。

 



試飲の後は、建物の隣にある駅の足湯「くろなぎ」でひと息つくのが定番。宇奈月エリアには全部で3つの足湯があるそうなので巡ってみるのもいいですね。湯に足と手をつけて、全身脱力するのが僕のスタイル。体がぽかぽかになるので、寒い冬には特におすすめです。
 



絶品甘辛麺で体の芯から温まる

お腹が空いた時に必ず立ち寄るのが、お食事処「ささや食堂」。移住してきた頃からずっと通っています。創業以来70年以上にわたり親しまれているお店で、現在は、六本木の本格中華料理店で修業をした3代目の店主が絶品料理を提供しています。なかでも特におすすめしたいメニューの一つが「旨辛みそラーメン」。辛いものが得意じゃない僕でも「おいしい!」と思える、絶妙な甘辛味。途中から、バターをトッピングして味変すると、まろやかになって異なるおいしさを体験できます。麺がなくなったらごはんとスープを合せて食べると、お腹もいっぱいに。「カツサンド」(1,000円)や冬季限定の「麻婆ラーメン」(950円)もお店の看板メニュー。カツサンドは、口に入りきらないほどの厚みがあって、手作りのケチャップ&ソースの優しい風味がやみつきになります。テイクアウトもできるのでドライブのお供にもおすすめですよ。

 

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わたしのとっておき|徳田 琴絵さん

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観光大使でいろいろな人や文化に出会い、
砺波(となみ)を知ることの楽しさ、伝えることの大切さを知りました。

 

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砺波をより深く知るきっかけになった「観光親善大使」という役割

「地域に貢献したい」という思いは、2014年に砺波の花の観光親善大使「プリンセスチューリップ」を務めたことがきっかけで芽生えたような気がします。一年間、砺波のいろいろな人々や伝統文化、イベントに出会って、知ることの楽しさ、伝えることの大切さに気づいた経験が今の活動につながっています。

「となみ野弁当 “華”(はなやぎ)」は、春に砺波チューリップ公園で開催される「となみチューリップフェア」(2025年は4月22日(火)~5月5日(月・祝)まで開催)の名物とも言える人気のお弁当。観光大使時代に知ってから大好きになり、今でもその頃の同期の仲間と集まる時は、一緒にこのお弁当を食べながら思い出話で盛り上がっています。
見た目が華やかなだけでなく、地元の伝統料理がふんだんに盛り込まれていて、砺波の味や文化を知ることができるのも興味深いです。大根の葉を味噌で炒りつけた「よごし」や地元の祭事に欠かせない「ゆべす」といった砺波の郷土料理、大門素麺(おおかどそうめん)、ます寿し、しろえびのかき揚げも入っていて、富山の味が全部詰まっていると言って良いほどの豪華さ。3日前までに予約すればいつでも購入できるので、地元の集まりやバスツアーにもよく利用されているようです。

砺波市観光協会(となみ野弁当)
富山県砺波市宮沢町3-9

砺波チューリップ公園
富山県砺波市花園町1-32


 


地元で愛される“くつろぎの”パン屋さん

築90年以上の古民家を改装して造られたパン屋さん「Boulangerie &café霜月」は、私のお気に入りの一軒。パンやカフェラテがおいしいのはもちろん、ここのカフェスペースは、ノマドワーカーの私にとって仕事場としても居心地の良い場所なんです。
窓際のカウンターで外の景色を眺めながら、原稿を書いたり企画を考えたり。新聞を読みにくる人やツーリング中のおじいちゃんなどもいて、地元の人たちが気ままに立ち寄れる温かい雰囲気が好きです。
こちらのパンは毎日食べたくなるようなシンプルで素朴な味が魅力。特にバターロールやクリームパンといった定番の品は家族にも喜ばれます。バリスタの方が作るカフェラテのかわいいラテアートに、いつもほっとした気持ちになります。

 

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Boulangerie &café  霜月
富山県砺波市三島町5-5

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わたしのとっておき|大田 直喜さん

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水も空気もきれいな井波だから生まれる
他にはない、ここでしか飲めないビールが楽しみ。

 

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2年で40種類以上。新たな発想に興味津々

自分のお店の近所にあるクラフトビール工房「NAT.BREW(ナットブリュー)」は、開業時期が近かったこともあって、いつの間にかお互い行き来するようになっていました。店主の望月俊祐(しゅんすけ)さんが大切にする「土着醸造」という、地元の素材を活かしたビール造りには共感する部分が多く、一緒にコラボをしたこともあります。パンの切れ端を使って発酵させたビールを商品化したり、ビール造りの時に出るオリ(沈殿物)と酵母を混ぜてパンを焼いてみたり。「フードロスをなくしたい」という共通の思いから、同じ井波という地域でどんな新しい味を提案できるのか、ワクワクしながらチャレンジをしています。

 

「NAT.BREW」は、オープンしてから約2年で40種類以上ものビールを造っていて、そのアイデアと実行力にはすごく刺激をもらっています。ビール好きなので、次々と出る新しい味がいつも楽しみです。
ここではビールを購入できるだけでなく、飲むこともできます。初めて訪れる人にまず飲んでほしいのは、定番の「HEY HEY HOO」というペールエール。富山産のクロモジを使っていて、ほどよく苦味がありながら柑橘系の香りもしてすごく飲みやすいのでおすすめです。

 

醸造のプロによる、井波ならではのビール造りに共感

望月さんは元々、大手メーカーで長くワイン造りをされていた醸造のプロフェッショナル。地元の木樽工場と一緒に取り組む新しいビールの計画もあるようで、これからの活動がますます気になります。
僕が井波でお店を始めた頃、「NAT.BREW」や同じく井波にあるコーヒー店「haiz coffee roastery」のように、ちょうど同じタイミングで移住してきた仲間がいるんです。お互いのお店を行き来しながら交流が広がるうちに、共通のお客さんも徐々に増えていきました。こうしたつながりを生かしながら、水も空気も澄んだ井波に根差した食品作りをすることで、まちの魅力発信になればうれしいなと思っています。

 

とやま旬だより|あさひ舟川 春の四重奏

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春の奇跡がここに! 彩りの絶景を堪能

富山県朝日町の舟川べりが色とりどりに染まるイベントあさひ舟川 「春の四重奏」。約1,200mにわたる桜並木、鮮やかな彩りのチューリップ、黄金色に輝く菜の花、そして残雪の北アルプス、この4つの景色が織りなす奇跡のような絶景で魅了します。
それぞれの花が満開の時期には、風が吹くたびに桜吹雪が舞い、辺り一面はいっそう幻想的な趣に。清々しい空気のなかで花の色が冴えわたる朝、色のコントラストで圧倒する昼と、訪れる時間帯によって異なる表情を楽しめます。
2025年の開催期間は4月上旬から中旬を予定。会場までは、最寄り駅からのシャトルバスの利用がおすすめ。春の訪れとともに、舟川べりで心癒されるひとときを過ごしてみませんか?


※詳細は、あさひ舟川  春の四重奏、朝日町観光協会の各公式サイトで確認を。
 

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