全国に名を馳せる駅弁の定番、富山名物、源の「ますのすし」手作り体験(富山県富山市ますのすしミュージアム)
ます寿しは富山のご当地名物です。起源は江戸時代まで遡り、かつては将軍にも献上されていました。明治41年に創業した「源」では、時代ごとの職人がレシピを磨き上げながら、昔ながらの製法にこだわって「ます寿し」を作り続けてきました。全国で駅弁として有名になってからも、郷土の味の普及を熱心に行っています。ご当地名物の手作り体験に参加して、自分の手でお土産を作ってみませんか? 特別感たっぷりのお土産ができますよ。
「ますのすしミュージアム」で、ます寿しの手作り体験
「ますのすしミュージアム」では、全国の駅弁大会などで絶大な人気を誇る「ますのすし」の手作り体験ができます。この施設は、ます寿しを製造・販売する「源」の本社工場に併設されており、ます寿しの魅力を「食べる、見る、買う、体験する」という様々なアプローチで教えてくれます。今回、手作り体験の指導をしてくれるのは、スタッフの松原さん。まずは木桶に隈笹を敷き詰めます。隈笹はきれいな緑色がご飯の白やますのピンクによく合い、香りがよく抗菌作用もあるため、今や源の「ますのすし」には欠かせない素材とのことです。
酢の調合割合は、トップシークレット
酢飯は、ご飯一膳強分を目安にします。大きさにしてテニスボールより少し大きめをひとまとめにして隈笹の上に平らに広げるのがポイントです。たくさん食べたいからといって、多くするのはNG。鱒と酢飯の絶妙なバランスによって、おいしさが作られているのです。酢飯は富山県産米100%で、体験当日の朝に工場で炊き上げたものを使います。「酢はオリジナル調合で、会社内でもレシピを知るのはごく一部というトップシークレットです」と松原さんは話します。
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店ごとに異なる秘伝のレシピ!個性豊かな「伝統の味」
県内にはもちろん、富山市内だけでもます寿し店は十数店舗あり、お店ごとにマスの厚みや並べ方、ご飯の炊き方、酢の効き具合、ご飯とマスの置き方など、それぞれに特徴があり、各店ごとの伝統の味を今に伝え続けています。ぜひ、様々なお店の味を食べ比べてみてください。
「富山ます寿し協同組合」公式サイト脂の乗りが抜群で肉厚の鱒を、さらにおいしく調味する
使うのは前日に捌いた鱒で、塩を振って一晩寝かせ旨味を凝縮させています。酢に浸すのは、酢飯にのせる直前の1分30秒ほど。鱒のおいしさを堪能できるように、酢を軽めにしているのも「源」のこだわりです。かつては「源」でも神通川で獲れる天然の桜鱒を使っていましたが、漁獲量が減った現在は、北欧から肉厚で脂ののりが抜群の鱒を仕入れて使っています。
鮮やかなオレンジ色の鱒を、酢飯を隠すように並べる
鮮やかなオレンジ色の鱒を、酢飯を覆うようにのせます。食べるときは中心部分を先に口に運ぶので、工場で作られた商品は中央に腹身、外側に背身がくるように配置されているとのこと。こうすることで、脂ののった部分を先に味わえ、食べ進めるとさっぱりとした後味を感じられます。6枚半から7枚の切身をごはんが見えないようにしきつめましょう。
空気を入れないように、丁寧に熊笹を折り重ねる
立ち上がるように開いた隈笹を一枚ずつ順番に折り重ねていくときは、隙間がないように気をつけましょう。このとき鱒のオレンジと隈笹の緑が互いを引き立て合っていることにも気がつくはずです。美しい色合いも、おいしさにつながる要素なのかもしれませんね。笹にかぶせるように木の蓋を置いたら、酢飯を押すようなつもりでギュッと体重をかけます。ここが体験で一番力を使うタイミングです。
蓋に手書きのイラストを描いて、自分の目印に
重石をのせる前に、ほかの体験者のます寿しと間違えないように蓋にイラストや名前を記します。世界にひとつだけの「ますのすし」、せっかくだから蓋にはオリジナルなものや富山らしいものを描きたいですよね。立山連峰や雷鳥、チューリップなど、富山の自然や風景もいいかも。味わい深い絵も、旅の素敵なエピソードになるはずです。お土産のます寿しを箱から出したときの周りの人たちの反応も楽しみですね。
40kgある重石をのせて、全体を均等に押す
木桶の上に重石をのせてしばらく押します。押しは、鱒の脂が旨味にかわり酢飯と馴染んでいきます。二つの味が溶け合ってひとつになることで、ますのすしのおいしさが完成するのです。富山にはほかにも「鱒寿司」を販売するお店がありますが、お店ごとに重石をのせる時間や、素材、レシピなどがすべて異なります。シンプルな郷土料理だけに、それぞれのお店が切磋琢磨しながらおいしさを育んでいます。
強力なゴムの力で、食べる直前まで押し続ける
重石を外したら、2本の竹で挟むように両側2ヵ所に強力なゴムをかけます。指の力だけでは簡単には延びない「ますのすし」専用の太いゴムを使うため、専用のゴムかけ機を使います。この機械はもともと「源」で製造の際に使われていたものだそうで、ゴムかけ仕事のために造られた足踏み式の道具です。ゴムをかけることで、「ますのすし」は食べるまでずっと押し続けら、どんどんおいしさが増していきます。
どんな味になっているかな? 帰ってから食べるのが待ち遠しい
源の「ますのすし」を象徴する、画家の中川一政さんの作品が描かれたパッケージに入れて体験は終了。体験専用の特別なサイズ感とパッケージのます寿しが出来上がります。消費期限は24時間後に設定されていますが、食べごろは6〜7時間後。そのため旅の締めくくりに手作り体験に参加して、新幹線や飛行機で自宅に戻った後に家族や親しい仲間と一緒に食べる人が多いようです。
駅弁にまつわる展示や、「源」の歴史の紹介も
「ますのすしミュージアム」では、全国の駅弁の掛け紙見本の展示や、「源」の歴史やます寿し作りの紹介も行なっています。駅弁の掛け紙は、今は存在していないものも多いので資料的な価値も高く、特徴的なイラストや書体が郷愁を誘います。また「お土産処 天人楼」では、「源」のスタンダード商品を扱うほか、ここでしか購入できない限定の味が並ぶこともあるそうです。予約制の商品もあるので、事前にチェックしたものを体験後に受け取るのもおすすめ。
富山を訪れた際に、「ますのすし手作り体験」に挑戦してはいかがでしょうか?
自分で作れば、食べるときの感動やおいしさが何倍にも膨らみますよ。 ガラス越しに製造風景の見学もできます。案内人付きの館内見学ツアーを実施している日もあるので、問い合わせてみましょう。
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「お食事処 さくら亭」での昼食もおすすめ
「ますのすしミュージアム」の中にある「お食事処 さくら亭」では、出来立てのます寿しや北陸の山海の幸を使った料理が楽しめ、工場で作ったばかりのます寿しは、手作り体験のものとは、違った美味しさを味わえます。事前予約すれば会席料理などの特別メニューが堪能できます。
「お食事処 さくら亭」公式サイトお申込み方法
ますのすし手作り体験は、下記よりご予約いただけます。
・所要時間:約60分
・料金:1700えん