風の街の幻想的な踊り「おわら風の盆」の楽しみ方
「おわら風の盆」は、富山市八尾町に秋の訪れを告げる行事。編み笠を目深に被った男女が、哀調ある音色を奏でる胡弓や三味線、越中おわら節の唄に合わせて、情緒豊かに町を流します。
おわら風の盆とは
毎年9月1日〜3日に本祭りが実施される「おわら風の盆」は、富山市八尾町に秋の訪れを告げる行事です。編み笠を目深に被った男女が、哀調ある音色を奏でる胡弓や三味線、越中おわら節の唄に合わせて、情緒豊かに町を流します。江戸時代から300年余り踊り継がれていて、地元で「旧町(きゅうちょう)」と呼ばれる11の町(支部)が、それぞれに町流しをします。坂の多い歴史ある町をしっとりと流す姿は、叙情と気品に溢れています。
八尾の街全体がおわらの雰囲気に包まれる
おわら風の盆期間中は、例年17:00から11支部が各町を流します。支部によっては特設ステージも設けられます。それぞれの支部で踊りの手さばきや浴衣の色柄、唄の歌詞が違うので、いくつかの町を見比べるのもおすすめです。越中八尾駅前の福島は、最大のおわら人口を誇り、ステージが設置され周辺には露店も並びます。東新町は小学生の女の子が早乙女衣装で踊ります。神社のそばで踊る天満町や、かつて花街として賑わった鏡町、日本の道百選で流す諏訪町など、どれも見応えがあります。
※2024年の町流しやステージ等の最新情報については「2024 おわら風の盆」公式ホームページをご確認ください。
11支部各町の特徴
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西新町
腰を深く落としてから大きく伸び上がる男踊りと、繊細かつ優美な女踊りが相まった町流しは、見応え十分。
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東新町
若宮八幡宮の境内で披露されるおわらには独特の風情がある。小学生の女子が早乙女衣装をまとって踊るのが支部の特徴。
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諏訪町
町流しが行われる諏訪町本通りは昔ながらの風情を残し、石畳の通りに格子戸と白壁の町家が立ち並ぶ。
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鏡町
かつて花街として賑わった場所で、女踊りには芸妓踊りの名残がある。おたや階段下がメイン会場となる。
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上新町
旧町で一番道幅が広く、比較的容易に町流しを見られる。観光客も参加できる大輪踊りも実施している。
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東町
かつては旦那町と呼ばれ、ほかの支部と違う浴衣の色合いから旦那衆の遊び心がうかがえる。
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西町
土蔵造りの酒造や格子戸の旅籠など情緒あふれる建物が残る。禅寺橋の石垣前での輪踊りは風情がある。
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今町
男女混合踊りを先駆けて取り入れたと伝えられている。創作当時のスタイルを大切に守り継いでいる。
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下新町
勾配のある坂道がある地区で、坂の中腹に八幡社がある。朱色を基調とした女性の浴衣が特徴的。
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天満町
おわらの唄の上句の途中に「よっこらしょ」と囃子が入る。音程を下げて力強く歌う独特の唄いを聴ける。
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福島
11の支部で最大のおわら人口を誇る。越中八尾駅のそばの特設舞台でステージ踊りも披露される。
ご紹介した11支部のスポットを地図でチェック!
地図上の各支部のエリアの主要道路を中心に町流しが行われます。
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おわら風の盆に関するQ&A
おわら風の盆に関する質問を八尾観光協会の谷井里美さんにお聞きしました。
Q:「おわら」って、どういう意味なの?
谷井さん
A:諸説ありますが、おわらひ(お笑い)という語を差し挟んで唄ったのが変化したという説、豊年を祈り藁の束が大きくなる(大藁になる)のを願ったことからという説があります。
Q 風の盆の由来は?
谷井さん
A 開催日の9月1日ごろは「二百十日」と呼ばれ、台風が多い季節で収穫前の稲が風害に合わないように豊作祈願が行われていました。やがてその厄日に豊穣を祈る「風の盆」に変わっていったといわれています。
Q なぜ編み笠を被っているの?
谷井さん
A 「おわら風の盆」が始まった当初は、身分や照れ隠しから手ぬぐいで顔を隠して踊っていたそうです。編み笠はそのころの名残りです。
Q 天候が悪くても実施されるの?
谷井さん
A 雨が降っている場合は中止になります。雨天用の会場がなく、地方(じかた)の楽器は濡れると壊れてしまうからです。
ステージでの鑑賞
例年、「曳山展示館ステージ」「八尾駅前特設ステージ」が設けられます。
「曳山展示館ステージ」は入場料が必要となりますが、決まった時間に席に座ってゆっくりと鑑賞ができ人気があります。「八尾駅前特設ステージ」は福島支部が独自に設営を行います。
動画で、おわら風の盆を予習しよう
昼の町流し・・・例年17:00から各支部で町流しが始まります。支部ごとに違う浴衣の柄や地方(胡弓や唄い手)の表情がよく見えるのは、明るい時間帯ならではです。
夜の町流し・・・日が沈み夜の町流しが始まると、通りのぼんぼりが灯って商店や家々の電気が消されます。町流しの優美さを、地域の人々も一緒になって支えています。
おわら観光の拠点、越中八尾観光協会
越中八尾観光協会は曳山展示館の中にあり「おわら風の盆」にまつわる様々な展示があり、例年は館内で「おわらステージ」が実施されています。また、風の盆にまつわるお土産も揃っています。一番人気は、毎年の開催に合わせて発売になるカレンダー。ほかにも、過去の行事の様子を収めたDVDも人気があるそうです。毎年5月に「おわら風の盆」と同じ地域で行われる祭礼行事「曳山祭」の曳山も展示してあり、八尾町の郷土芸能を深く知ることができます。
町流しのない時間は「八尾おわら資料館」を訪れて
おわら風の盆の歴史、歌詞や踊り、地方について詳しく紹介している施設です。映像展示室では、幻想的で優美なおわらの映像が大画面で上映されています。踊り子のように編み笠を被って写真が撮れる大パネルも人気が高いそう。格子戸と日本瓦葺き、漆喰仕上げの美しい町屋の佇まいにも魅了されます。
Column
諏訪町の踊り子 山田千紗都さんにお話を聞きました。
何歳から踊り子をやっていますか?
山田さん
2歳ごろから踊っています。ちなみに、母は下新町の元踊り子で、諏訪町に嫁ぎ、今は地方で三味線をやっています。
父も元踊り子で現在は胡弓をしています。弟も踊り子です。
踊り子を続けている理由は何ですか?
山田さん
学生時代は強い思い入れがありませんでしたが、大人になり地元の年長者の話を聞くうちに、皆さんの熱意に感化され、自分も貴重な経験をさせてもらっていると感じるようになりました。今は踊りが生活の一部です。
どんな気持ちで踊っていますか?
山田さん
遠くから来られた方に、少しでもいい思い出ができるようにという気持ちで踊っています。踊ることで全国の方と繋がりができるのもうれしいです。
踊り子は、何歳まで続けるのですか?
山田さん
昔は浴衣の数が足りないほど踊り子の人数が多かったので、25歳という年齢制限を設けていたという話を母から聞いています。
現在もその制限をきっちり守っている支部もありますが、踊り子減少による人不足の為、25歳を過ぎても1,2年ほど踊り子を続ける支部もあります。
諏訪町の特徴を教えてください。
山田さん
踊りの途中に回るところがあるのですが、回り方のリズムに特徴があります。諏訪町は道路が石畳で回りにくいため、ゆったり回る踊りになったと聞きました。踊りだけでなく地方にも注目してください。しっとりとして情熱を内に秘めた行事なので、静かに見ていただくのがおすすめです。
Column
~おわら風の盆の町を堪能~「八尾贅沢プラン」で 越中八尾の旧町さんぽ
通年でおわらを楽しめる『観て、食べて、歩いて、弾いて越中八尾を楽しむ「visit富山県 八尾贅沢プラン」』も実施しています。歴史や文化に触れながら、越中八尾をまるっと楽しめました。越中八尾が初めての人も、リピーターも「おわら」はもちろん、「おわら以外」も楽しめるプランです。
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