氷見観光の心臓部を担う道の駅
「氷見漁港場外市場 ひみ番屋街」取締役事業部長 尾町和広さん
富山県氷見市にある道の駅「氷見漁港場外市場 ひみ番屋街(以下、「番屋街」)」。2012年にオープンして以降、累計来場者数は1,300万人を超え、氷見を代表する観光拠点となっています。
2024年には、「ひみ寒ぶり」をはじめとした豊富な氷見の食文化や天然温泉「総湯」、海越しに見える雄大な立山連峰の景色などが評価され、道の駅ランキング(※)で中部・北陸エリア1位、全国4位にランク入りしました。
(※)『道の駅 最強ランキング』晋遊舎(2024年)
運営する「氷見まちづくり株式会社」の尾町和広さんに、
道の駅から挑む観光業活性化に向けた取り組みを伺いました。
食の都を堪能できる観光拠点
漁師の作業小屋である「番屋」をモチーフに、6つの棟に分かれている「番屋街」。氷見漁港で水揚げされる旬の魚を使った回転寿司や氷見牛、氷見うどん、氷見カレーなど地元ならではの名物料理が味わえる飲食店、新鮮な海産物や干物を販売する土産店など、計30店舗が集結しています。
建物の右奥にある「みのりの番屋」は、地元農家の朝採れ野菜や安心・安全な加工品などを数百種類取り揃える農作物直売所。「来館者に必ずおすすめしている」という「草餅」は、論田(ろんでん)地区のおばあちゃん達が手間暇かけて作ったもので、200個が午前中で完売するほど人気を集めています。
「氷見には魚だけではなく、肉や野菜など豊富な食の恵みがある。観光拠点として、知られていない氷見の魅力を伝えることも大切」と話します。
道の駅「氷見漁港場外市場 ひみ番屋街」/ 氷見温泉郷「総湯」
住所|富山県氷見市北大町25-5
電話|0766-72-3400(氷見まちづくり(株))
営業時間|氷見漁港場外市場「ひみ番屋街」
【鮮魚・物販施設】8:30~18:00 ※鮮魚は売り切れ次第終了
【フードコート】8:30~18:00
【飲食施設】11:00~18:00
【回転寿司】10:00~20:00
※店舗により営業時間が異なります
定休日|1月1日
駐車場|普通車220台、バス10台(無料)
地元住民と観光客がふれあう、天然温泉・足湯
「番屋街」に隣接する「総湯」は、約1,250mの地下から湧き出た源泉かけ流しの天然温泉。
大浴場からは、富山湾や県指定の天然記念物「唐島(からしま)」を一望することができます。
海越しの立山連峰を望める展望広場や、天然温泉を使用した無料の足湯も人気スポット。
足湯では、地元住民と観光客の間でおすすめの場所や氷見の良さを語り合っている場面もみられます。「番屋街が先頭を切ってPRしていくことも大切だが、氷見市民1人ひとりが観光案内人になればもっと氷見の良さは伝わる」と笑顔をみせます。
氷見ならではの食文化を伝える、商品開発
従来は氷見や富山、能登などの商品を中心に取り扱っていましたが、2021年には「豊かな食文化をお裾分けする」をコンセプトにした自社商品ブランド「ageccha(あげっちゃ)」を開発。
市の特産品である海藻「ナガラモ」を使ったノンオイルドレッシングやご飯のお供などを販売しています。
開発のきっかけは、ナガラモが食物繊維やミネラルなどの成分を豊富に含んでいる食材だと知られたことからでした。元々は生食用しか販売していなかったナガラモを加工品にしたことで、新たな活用方法を提案し、その魅力を全国に発信しています。
氷見と全国をつなげるパイプ役として
「番屋街」では、姉妹都市の物産展や地元有志による獅子舞、バンド、漫才など、毎月2〜3回以上のイベントを開催しています。また、定期的に全国各地へ出向き、市内事業者の商品を販売。氷見と全国各地をつなげるパイプ役を担っています。
「当社の経営理念は『近説遠来』。まずは地元の方に愛される施設になれば、自然と全国からの観光客も増えてくる。氷見と全国を結ぶ存在になりたい」と話します。
「また会いたい」を目指したホスピタリティ
年間来場者数120万人を誇る道の駅を運営するにあたり、尾町さんが「最も大切にしている」と話すのが「お客様に喜んでもらうためのホスピタリティ」です。
10年以上百貨店で働いていた経験を活かし、従業員教育やアメニティに至るまで、細部にこだわったおもてなしを追求しています。また、オープンしてからは欠かさず、毎月の来場者のアンケート結果とおもてなしに必要な考え方などをまとめ、各店舗に共有しています。
従業員には「エンターテイナーとして、商品を売る前に自分という人間を売ってほしい」と伝えているそう。「できないと言うことは簡単だが、まずは目の前のお客様をどう喜ばせ、期待以上のご満足をいただけるのか考える。また会いたいと思ってもらえるような接客を目指している」と話します。
「ひみ寒ぶり」シーズンに直撃した、大震災
2024年元日。氷見の街に突如「能登半島地震」が襲いました。
「番屋街」のエリアは、市内のなかでも特に被害が大きく、液状化現象により、駐車場には多くの亀裂や陥没が発生。水道管が漏水したことにより、長期間の断水が起こりました。
「ひみ寒ぶり」で最も賑わうシーズンだったことも災いし、被害総額は数千万円になるといいます。
周辺のスーパーやコンビニが品薄状態になっていたことから、震災翌日には断水の影響を受けなかった土産店1店の営業を再開。断水が解消された翌日には「総湯」の営業を再開し、避難者や災害ボランティアに無償で提供したところ、毎日数千人の被災者が訪れました。
観光の心臓部として地域を紡ぐ
震災後まもなくして、輪島塗の会社を営んでいる1人の男性が「番屋街」を訪れます。
男性から「仲間の工房が全て失われた。助けてほしい」と支援を求める声を受け、7月に「能登復興応援イベント」を開催し、輪島塗を販売しました。
3日間にわたって開催されたイベントは大盛況。「何度も涙する姿を見て、何か力になりたいと思った」と当時を振り返ります。
また、震災発生直後から現在に至るまで、全国各地から温かい応援メッセージや支援の声が続いています。「震災を通じてつながりに支えられていると実感した。この気持ちを胸に、これからも氷見の観光の心臓部として、事業者や地域をつなぐ観光商品を作っていきたい」と話す尾町さん。
「番屋街」の活動により、今後ますます氷見の名が全国に轟いていく予感がしました。