冬の大岩名物を目指して
上市町・中華そば あざみ店主 / だんごや6代目 滝川哲平さん-1

冬の大岩名物を目指して
上市町・中華そば あざみ店主 / だんごや6代目 滝川哲平さん


富山県東部の山寄りにある上市町(かみいちまち)。
日本百名山で名高い剱岳(つるぎだけ)の麓に位置し、豊かな自然に恵まれた地域です。

その中でも大岩エリアは、真言密教の大本山「大岩山日石寺(おおいわさん にっせきじ)」をはじめ、神秘的な渓流「千巌渓(せんがんけい)」や夏の名物である「大岩そうめん」など数多くの見どころがあります。

今回は、そんな大岩エリアをさらに盛り上げようと奮闘する、中華そばあざみ店主・だんごや6代目の滝川哲平(たきがわ てっぺい)さんにお話を伺いました。

 

県内外から愛される「大岩のお不動さん」


日石寺は、真言密教の大本山として長い歴史を誇り、現在でも多くの人々が訪れています。自然に囲まれた境内はとても広く、静寂と荘厳な雰囲気に訪れた人々は魅了されています。地域の人を中心に、県内外から「大岩のお不動さん」として愛されてきました。

必見なのは、平安時代末期から鎌倉時代にかけて制作された不動明王像です。
この像は、凝灰岩の巨岩に半肉彫り(はんにくぼり)の技法で彫刻されており、迫力ある不動明王を参拝した人は、その力強さに圧倒されます。六本滝での滝行も有名です。

 


また、毎月1日と27日、さらに毎週日曜日には不動明王の御尊前(おんまえ)で護摩祈祷(ごまきとう)が行われます。祈祷日には、日本固有の木で古くから「長者の木」、「千里眼の木」と呼ばれメグスリノキのお茶が参拝者に振る舞われるなど、名物ともいえる独自の文化が残っています。
 

老舗旅館と名物そうめん


大岩エリアの名物の1つに、夏の「大岩そうめん」があります。
ぶっかけスタイルのこのそうめんは、絹のように美しく重なった盛り付けと強いコシが大きな特徴です。大岩そうめんは日石寺の門前町にある3つの店舗で楽しむことができ、夏季には県内外から多くの人が訪れます。

今回の主人公である滝川さんが切り盛りする「だんごや」も、大岩そうめんを提供する店舗の1つです。だんごやは、明治23年に創業した130年以上の歴史を持つ老舗の旅館です。もともとは団子を販売していたそうですが、県外から多く訪れる参拝客のために旅館業も始め、これまで多くの人々に愛されてきました。

滝川さんはだんごやの6代目で、富山市内のホテルで勤務後、家業を継ぎました。


 

家業を継いだ滝川さんは、大岩エリアを盛り上げたいとの思いから、大岩生そうめんを開発しました。大岩の湧き水を使用して作られたそうめんは好評を博し、多くの観光客が訪れるようになりました。
4月から10月の間、ランチ営業時期に提供されるこの一品は、大岩エリアを楽しめる大きな魅力の一つになりました。

 

Information


旅館だんごや
住所|中新川郡上市町大岩32
電話|076-472-2306
営業時間|11:00〜15:00
定休日|4月下旬~10月は休まず営業。
    宿泊は通年営業

中華そば専門店「あざみ」を開業


生そうめんのチャレンジにひと段落がついた滝川さんは、新たなチャレンジを行います。
2023年12月に百段坂の登り口にあたる場所で中華そば専門店を開業しました。その理由を尋ねると、「かつては7店舗が大岩エリアでそうめんを提供していましたが、いまでは半分以下になりました。また夏はこれまでも活気がありましたが、冬になると観光客はどうしても少なくなり、寂しさを感じていました。
日石寺の大寒の滝行や、護摩祈祷などは冬の見どころで、冬季のポテンシャルもあるはずです。もっと冬にも人が来てほしいと思いチャレンジしたのが中華そばでした」と話します。

もともと生そうめんを扱っていた滝川さんは、そのノウハウを生かし中華そばの開発に乗り出します。研究に研究を重ね、こだわりの詰まった一杯が完成した滝川さん。かつては大岩そうめんを提供していたお店の跡地に、「中華そば あざみ」をオープンしました。

 

Information


中華そば あざみ
住所|中新川郡上市町大岩6
電話|076-473-1480
営業時間|11:00〜15:00(麺がなくなり次第終了)
定休日|なし

こだわりの詰まった中華そば


特にこだわったのは「麺」です。あざみの麺の特徴は、かんすいが少なめの自家製平打ち麺です。ピロピロ麺とも評される独特の縮れた麺は、柔らかくもちもちしており、どこか日本らしさを感じられる味と触感に仕上がっています。

「この地には老若男女問わず多くの人が訪れます。年代を問わず親しんでもらえる、日本らしい麺にしたいと思って作りました」と麺づくりに込めた思いを話してくれました。


 


「見た目」も重視したという滝川さん。
器いっぱいに盛られた麺、なみなみと注がれたスープは見た目も実際の食べごたえも抜群
です。麺が隠れるほどチャーシューが盛られた「肉中華」は、滝川さんのこだわりをまさに体現した、インパクトが大きい一杯です。

「夏のそうめんは淡麗で上品なことが特徴ですが、人によってはお腹を満たせない人もいるかもしれません。冬の温かい中華そばは、みんながお腹いっぱいで帰ってもらえる一杯にしたかった。せっかくなら自慢の麺でお腹いっぱいになってもらいたくて、この盛りになりました」と笑いながら語ります。


スープも山間部である大岩らしさを表現しようと、かつおや昆布といった海のものは使用していません。豚と鶏からとったしょうゆベースのスープにも、こだわりが詰まっています。

冬の新名物に込める思い


冬の新名物を目指しお店をオープンさせた矢先の2024年1月1日に、令和6年能登半島地震が起こります。
「地震発生時は海から比較的近い両親の家に家族といたため、地震後はみんなで避難をしました。身の安全を優先しましたが、新しく開いたばかりのあざみや、だんごやに被害がないか心配でした」と当時を振り返ります。幸いにも両店ともに被害はなく、胸をなでおろしました。

 



地震による観光控えなども起こる中、新たに誕生したお店には、多くの人が訪れたそうです。「最初は1人で細々と続ければ、と思っていましたが、予想以上に多くの人に訪れてもらえて、体制を見直すことにしました」と当時の反響ぶりを振り返ります。

百段坂の下に店を構えてから気づいたこともあると言います。「夏以外のシーズンでも大岩エリアに足を運んでいる人は意外と多いことがわかりました。県外からドライブで来る人やツーリングを楽しむグループも多いです」と、だんごやの中を切り盛りしていた時にはわからなかったことも気づいたと話します。

「今後の目標は、この中華そばを大岩の冬の名物にすること。そして、より多くの人に冬の大岩にも足を運んでもらいたいです」
と今後の展望を話してくれました。


 

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