ゲストハウス「又三郎」西川扇京梅さん-1

ゲストハウス「又三郎」西川扇京梅さん


富山県の東の玄関口にあたる朝日町は、海と山に囲まれた自然豊かな町です。
朝日町のまちなかから車で10分ほど山あいに進むと、自然豊かな渓谷に笹川地区があります。

この地で育ち、2024年にゲストハウス「又三郎(またさぶさ)」をオープンした、オーナーで日本舞踊宗家西川流師範の西川扇京梅(にしかわ・せんきょうばい)さんに話を聞きました。

 

築100年の古民家をゲストハウスに


あさひ舟川の「春の四重奏」やヒスイ海岸で有名な朝日町。
この朝日町の東部に、自然豊かな里山の笹川地区があります。

近隣には、源(木曾)義仲ともゆかりのある笹川諏訪神社や宮崎城跡が残るなど、歴史ある場所でもあります。
西川さんはこの地で生まれ育ちました。

 


「笹川地区には、大きくて立派な古民家が多くあります。
しかし、後継者がおらず空き家になっているところも多く、もったいないと感じていました」と話す西川さん。

もともとは取り壊されそうになっていた古民家を買い取って自身の稽古場にしていましたが、せっかくの空間をもっと活用したいと考えます。古き良き日本の家屋と、自分の強みである日本舞踊を活用して何かできないかと思い、ゲストハウスの開業を決意しました。

その後は2階部分のリノベーションを行うなど、古民家ならではの良さを残しつつも居心地の良いお部屋が完成し、1日1組限定のゲストハウスとしてオープンしました。

 

Information


ゲストハウス「又三郎」
住所|下新川郡朝日町笹川590-8
営業時間|チェックイン15:00〜22:00 / チェックアウト 〜10:00
料金|家主滞在型/2~8名様
・2名様まで15,000円~
・3名様からおひとり増えるごとに+3,500円~
※Airbnbのサービス料がかかります。
予約|Airbnbでご予約受付

開業直後に起きた震災


2023年12月に民泊事業者としての登録が完了し、3月から本格的な宿泊客の受け入れを計画していた矢先。
2024年1月1日に「令和6年能登半島地震」が起きました。

幸いにも又三郎に被害はありませんでしたが、双子の姉が氷見市で営んでいた古着屋には被害が直撃し、移転を余儀なくされました。「何よりも姉のお店のことが心配でしたが、本格的な営業も控えておりゲストハウスの不安もありました」と当時を振り返ります。

又三郎では、地震が起こる前から防災に向けた準備をしていました。
ゲストハウスがある位置の海抜を記したラミネートを置いておいたり、震災被害があった際にも宿泊客や近隣の住民が使えるようトイレを汲み取り式トイレにしたりと、防災への備えは欠かしていません。

 

伝統芸能の担い手として


西川さんは、日本舞踊宗家西川流の師範としても活動しています。
中学生のころにテレビで見かけたことがきっかけで始めました。「このころから興味が湧いたことにはチャレンジしてみる性格でした。ゲストハウスの開業もまったく一緒です(笑)」と語ります。

数年前に師範となってからは、日本舞踊の講座を行うなど、伝統芸能の担い手として活躍しています。宿泊客がいないときには又三郎で稽古を行っており、運が良ければ稽古後の着物姿で宿泊客を迎えてくれることもあるそうです。

 

体験型のゲストハウス


又三郎は、全国的にも珍しい体験型ゲストハウスであることが特徴です。
西川さんの特技を生かして日本舞踊の体験レッスンを受けることができます。ゲストハウスにある着物や浴衣のレンタルと着付け体験を行うことができ、これらは笹川地区はじめ多くの人から大切に受け継いだものだそうです。

笹川地区で活動する方ともコラボし、陶芸体験やヨガ体験などのメニューも揃えています。
最近では、ヒーリングエステが体験できるプログラムもはじめました。

 

クラシカルさを求めて訪れる宿泊客


又三郎には、長野と金沢を移動する際の中継地点として利用するお客さんが多いそうです。
古くは北陸街道の要所として、宿場町や関所で栄えた朝日町ならではで、ここにも歴史が息づいているのかもしれません。

伝統的な日本の家に泊まってみたいという外国人の方も多く訪れるそうで、宿泊客の半数は外国人とのこと。海外からの旅行客には、着物や浴衣など、日本の伝統芸能が楽しめる体験がとても喜ばれます。

西川さんが着物で宿泊客対応をする際は、一緒に写真を撮ってほしいという声がとても多いそうです。

 

ひとときを楽しんでもらうために


大切にしていることをお聞きすると、「お客さんがプライベートな時間を楽しんでもらうため、あまり意識しすぎないことを意識しています」。民泊としてゲストにくつろいでもらうため、コミュニケーションは取りつつも距離感を大事にしていると話してくれました。

お客さんに楽しんでもらいたいという気持ちは、こだわった家具や調度品、週替わりで替わる生け花などからも感じることができ、西川さんの丁寧な人柄が伝わってきます。

 

日本の里山を感じられる場所


西川さんによると、「この地域の人はチャレンジングな人が多い」そうです。
実際に、西川さん以外にも、地域の人の手でゲストハウスが誕生したりするなど、この希望が芽生え始めています。

最後に、「笹川地域は日本の里山の良さを感じられる、私の大好きな場所です。もっと多くの人にこの場所に訪れてほしいです」と西川さんは笑顔で話してくれました。

 

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