大長谷の宝を、料理の強みに「村上山荘」森恵美さん-1

大長谷の宝を、料理の強みに「村上山荘」森恵美さん

「村上山荘」がある富山市大長谷(おおながたに)地区は、「おわら風の盆」で知られる富山市八尾(やつお)町中心部から車で30〜40分ほど離れた、白木峰(しらきみね)や金剛堂山(こんごうどうざん)に囲まれた大長谷川沿いにある集落です。

春から秋にかけて、キャンプや川釣り、トレッキングなどのレジャーを満喫しにたくさんの人が訪れます。高山植物の宝庫と呼ばれる「白木峰(標高1,596m)」散策の玄関口になっており、夏はニッコウキスゲ、秋は燃え上がるような紅葉が登山者を魅了しています。天候に恵まれれば、山頂から立山連峰や富山湾も見渡せます。

森恵美さんが料理の腕を振るう「村上山荘」は、4月中旬から11月下旬にかけて大長谷の旬の食材を使いながらイタリアンと和食を提供しています。

大自然の中で、地元の恵みに向き合って料理する姿を見せてもらいました。

県境にある秘境集落「大長谷」で暮らす

岐阜県境に位置し、大自然に囲まれる大長谷地区。近年は地域の魅力に引かれて移住する若い世代が増えています。
森さんも移住組で、埼玉県出身の夫・大輔さんと3年前から大長谷で暮らし始めました。

「ここに住んでいる人や訪れる人は、みんな大長谷が好き。
高齢の方々も、自分で生活できるうちは大長谷を離れたくない人ばかり」と話します。
 


【交通アクセス】
 ■ 富山駅から
   ・JR高山線「越中八尾」下車、「越中八尾」駅前から
    富山市コミュニティバス大長谷線に乗り換え「庵谷(いおりだに)」下車すぐ

 ■ 自家用車、タクシーを利用の場合
   ・富山きときと空港から約1時間
   ・北陸自動車道「富山IC」から約1時間




 

大長谷でイタリア料理を出すことを決意

かつては大阪のイタリア料理店で腕を磨いていた森さん。

「村上山荘」のキッチンに立つことになったきっかけは、実家がある富山市婦中町へのUターン時に、叔父である村上光進さんが営み自身も幼い頃より何度も来ていた「村上山荘」を手伝ったことでした。

大長谷の店の手伝いをしていたとき、「山菜でパスタを作ってよ」というお客さんからリクエストを受けた森さん。「試しに作ったパスタを食べてみたら、採れたての山菜があまりにおいしくて驚いた」と振り返ります。

もともと大長谷が好きだったことに加え、素晴らしい食材が豊富にあることが決め手となり「村上山荘」の厨房に立つことを決意しました。

 

山菜やジビエの扱い方を、地元の人にイチから教わる

「村上山荘」は、光進さんが営み、地元で採れる山菜やきのこ、イワナを使った定食、一品料理を提供してきました。

森さんはイタリア料理の修業をしてきたものの、当初は山菜の下処理の方法も山の植物の名も知りませんでした。

現在のお品書きに並ぶジビエや山菜、野草といった食材の扱い方は、大長谷の住民にイチから教わりました。今では光進さんや大輔さんが採ってきた山菜、大長谷生まれの猟師である石黒木太郎さん(大長谷ハンターズジビエ)から仕入れる鹿や猪肉を使いこなしています。


 

お客さんのクチコミで、イタリア料理が評判になる

お店で料理を出すようになると、すぐに評判がクチコミで広がり始めました。
特に人気が高いのは、旬の食材を使ったピザ(平日は予約が必要)。

春は山菜、秋は鹿や猪を加工したジビエソーセージ、きのこを使っており、季節ごとの大長谷の姿を伝える存在です。
森さんは「村上山荘」に入ってから、素材の特徴を生かすことをより深く考えるようなったと言います。

「どこにも負けない」と胸を張って言える地元の食材の味や食感、香りを工夫を凝らしながら分かりやすく届けることが、森さんのポリシーです。


 

大長谷では、いろんなものに寄り添うことが大事

ピザを焼く石窯は、左官業に従事する森さんの父と弟が造りました。
専用のピザ窯ではないため、窯の特徴に合わせた焼き方や生地作りをしているそうで、今でもレシピを進化させ続けています。

石窯の燃料は、大長谷の山で伐採した木を使用。大きさがバラバラだったり水分を含んでいたり、それぞれの薪が個性を持っていますが「あるものに寄り添うのが大事だと考えるようになった」と話します。

ピザの焼け具合が毎日違うのも楽しいそうです。


 

総合案内所であり、皆が集まる温かい場所

「村上山荘」には、地元の人たちが持ち寄った農産物や加工品の販売コーナーもあり、大長谷の住民が頻繁に訪れます。おのずと情報も集まってくるので、山登りやイワナ釣りのお客さんに、そのときの山の様子や釣果なども伝えています。

自然を思う存分楽しみたい人には、大長谷をはじめ富山県内で体験ツアーを行っている「エコロの森」が実施するツアーも紹介しています。大長谷のベテランガイドが自然の中を案内し、春は山菜、秋はきのこ狩りに参加できるツアーです。森さんが作るランチ、大長谷温泉の入浴などがセットになっています。

グリーンシーズンは県外からの宿泊者もたくさん訪れ「ここは大長谷の総合案内所であり、皆が集まる温かい場所」と、森さんは「村上山荘」のことを紹介します。


 

雪深い冬は、学びと充電の期間

冬の大長谷は一晩で1.5mも雪が積もることもあり、11月下旬から4月中旬までは「村上山荘」も予約がなければ休業しています。森さんはケータリングの注文を受けたり、富山市内の料理店で働いたりして過ごします。

「フレンチレストランや日本料理店の厨房に立ち、それぞれの世界の食材の扱い方を教えてもらう。
すごく勉強になっているし、ありがたい期間」と話します。

春から秋にかけては富山市内の仲良しのシェフたちが大長谷に遊びに来てくれることもあるそうです。


 

どこにも負けない地域の宝を、自分や地域の強みにする

「富山は海・山・里と魅力的な場所がたくさんあって、星がきれいで空気や水がおいしい。
何もないけれど、それがいい。そこにある資源を楽しんでほしい」と森さん。

大長谷で暮らす人や訪れる人は「ここが好き」と胸を張る人ばかりです。
「私は大長谷で水がおいしいと感じ、山菜を料理に使っている。

何かひとつ『これは負けない』という宝を見つけられたら、自分や地域の強みになる」と森さんは実感しています。

Column

富山市 観光エリアガイド-1

富山市 観光エリアガイド

駅周辺の文化施設や南北に広く自然景観も楽しめる見所満載のエリアです。

富山市 観光エリアガイド

この記事を見た人はこんな記事を見ています