地域の生産者と消費者のつなぎ手に
ティー・ツリー・コミュニケーションズ 代表取締役 茶木勝さん-1

地域の生産者と消費者のつなぎ手に
ティー・ツリー・コミュニケーションズ 代表取締役 茶木勝さん

日本を代表する名山「剱岳(つるぎだけ)」のふもとに位置する上市町(かみいちまち)。
登山やトレッキングを楽しめる山々など豊かな自然と、山岳信仰とその歴史を感じることができるスポットや体験プログラムが魅力です。

そんな上市町でお土産の販売や商品開発を行っているティー・ツリー・コミュニケーションズ代表の茶木勝(ちゃき・まさる)さんにお話を伺いました。
 

生産者の想いを紡ぐ商品


参道にトガの木が立ち並ぶ眼目山立山寺(がんもくざんりゅうせんじ)や環境省の名水百選に選定されている「穴の谷の霊水(あなんたんのれいすい)」といった上市町を代表する観光スポットからほど近い「つるぎの味蔵(あじくら)」。地元の生産者が作った農産物や加工品、雑貨のほかに、自社開発したジェラートやお茶などこだわりの商品を販売しており、観光客や地元の人でにぎわいます。

「地域の生産者とお客さんをつなぐ役割を担いたい」と語るのは「つるぎの味蔵」を運営するティー・ツリー・コミュニケーションズ代表の茶木さん。最初に商品開発したジェラートのパッケージには生産者の名前が冠してあるなど、おいしいものを届けたい生産者の思いが伝わるような商品づくりを行っています。

登山シーズンのほかに、近くにある富山県薬用植物指導センターがシャクヤク園を開放する5月や上市の特産品であるサトイモの収穫シーズンである秋になると県内外から多くの人が訪れます。茶木さんは「サトイモを目当てに訪れた県外の方に近くのおすすめスポットをお伝えすることもよくあります」と観光案内所のような役割も担っています。

居心地の良さにUターンを決意


茶木さんは富山市出身。長らく東京の会社に勤め、転勤族として全国を回っていました。
地元である富山に赴任した際に「都会にはない空気感や時間の流れ方が自分には合っていた」と、以前は気付かなかった富山の居心地の良さに魅せられ、退職を決意。これからの人生を富山で過ごしていくことにしました。

職探しをしていた茶木さんですが、富山に戻ってから趣味となった山歩きのツアーに参加していた時に、偶然出会った人から上市町で「雇用創造協議会」が開催されることを聞き、参加することになります。協議会では、参加者とともに上市町の魅力を掘り起こして、商品化していきました。

せっかく作った商品ですが、当時は売り先がありませんでした。「それなら、自分が会社を興して売ろう」と2014年にティー・ツリー・コミュニケーションズを起業しました。

 

日石寺の文化を手軽なお土産に


数ある自社開発商品の中でも特徴的なのが、メグスリノキを使った「メグスリノキの九宝茶(きゅうほうちゃ)」や「Beautyやくぜん茶」などのお茶です。
メグスリノキは日本の山間地のみに自生する木で、古くから「長者の木」や「千里眼の木」として珍重されてきました。真言密教の大本山である「大岩山日石寺(おおいわさんにっせきじ)」では祈祷日になると煎じたお茶がふるまわれており、上市町で昔から親しまれてきました。

「上市の伝統を知ってもらう商品にしたかった」と、貴重なメグスリノキを中心にさまざまな植物をブレンドしたお茶商品を開発しました。「メグスリノキの九宝茶」のパッケージは、薬包紙の折り方を参考にしており、売薬さんで有名な富山県らしい包装がお土産として喜ばれるほか、海外の観光客からは「日本の折り紙みたいで楽しい」と反響があります。

これらの商品は「つるぎの味蔵」での店頭販売だけでなく、県内外のシティホテルやリゾートホテルの客室サービスのお茶用に卸されているそうで、富山を飛び越えて、おもてなしの一翼を担っています。

富山の竹を「竹菜」に


さまざまな商品開発を行ってきた茶木さんが次の挑戦に選んだのは、「国産のメンマをつくること」でした。コロナ禍でホテルへの卸事業が打撃を受け新たな事業の柱が必要と感じていた時に、九州で国産メンマづくりの取り組みが行われていることを知りました。竹林被害を防ぐために伐採された1~2mの若い竹はその後の利活用が問題で、富山県内でも伐採された幼竹がたくさんありました。

「これは面白い」と感じた茶木さんは、九州で取り組みを行っている人のところを訪ねて教えを請いました。そして上市町の地域の人と「竹取キッチン」というチームを組み、上市町の竹を使ったメンマづくりを開始し、2023年9月にようやく商品として販売を開始しました。

「ラーメンの具のイメージだけでなく、家庭の一品として使ってもらいたい思いから『竹菜(ちくさい)』と呼んでいます」と話す竹取キッチンのメンマは、一般的なメンマだけではなく、細かく刻まれアンチョビトマトや火鍋風といったさまざまな味付けがされたレトルト商品もラインアップされるなど、竹菜に込めたメッセージが伝わってくる商品が並びます。

 

愛着のある上市の名物


茶木さんは、いまでは上市町に強い愛着を持っています。おすすめの観光スポットを聞いてみると、「やっぱり大岩山日石寺かな。岩に掘られた本堂の不動明王の磨崖仏(まがいぶつ)だったり、参道沿いの門前街や大岩のそうめんも楽しんでほしい」と微笑みます。

同町出身の細田守さんが監督を務めた映画「おおかみこどもの雨と雪」の舞台モデルとなった「おおかみこどもの花の家」や、「穴の谷の霊水」「城山(じょうやま)の湧水」などの名水もぜひ行ってほしいスポットだそうで、夏になると「つるぎの味蔵」では穴の谷の霊水を使ったアイスコーヒーやかき氷も提供していて夏の名物になっています。

「地元の生産者さんの思いを届けるための商品開発はやっぱり楽しいし、達成感がある」と語る茶木さん。作り手と観光客、作り手と地域の住人をつなげるチャレンジはこれからも続きます。

Column

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