街のにぎわいをみんなで生み出す
「たかまち鑑定法人株式会社」服部恵子さん

幼少期から間取り図を書いて遊んだり、家の間取りを想像したりするのが好きだったという服部さん。

不動産鑑定士を目指し始めたのは、新卒で都内の大手ハウスメーカーに勤めていたとき。
「勉強したら誰でも取れるよ」という同僚の一言がきっかけでした。
手に職をつけたいと考えていた服部さんは、資格取得のために富山にUターンし、会社員として働きながら合間を縫って資格勉強に励みました。

「初めてのボーナスは教材代に消えた」と笑う服部さん。
努力が実を結び、30歳の時に資格を取得し、2012年に法人事務所を設立しました。

 

不動産鑑定士として、これまで見てきた物件の数は約2,000件以上。
その仕事内容は多岐に渡り、行政から委託を受けて公示地価や路線価を鑑定したり、資産評価や相続を行う際の指標の一つとして鑑定の依頼を受けたりすることもあります。

「基本的には物件を見るのが仕事。最近は地域を感じることも大切にしており、例えば新しい道路ができた際には、今後、道沿いにどんな住宅地や商業地が出来そうかまで考える。街そのものをどう捉えるのか、鑑定士として大事にしている」と話します。

閑静な住宅街にある「ほんまちの家」は、母屋、中庭、蔵など町家ならではの建築様式を生かしたリノベーションが施されており、伝統工芸の体験プログラムや街歩きツアーなど、ものづくりの街・高岡の暮らしを楽しむことができる宿泊施設です。

「宿を拠点に、元々ある高岡の魅力を組み合わせ、さまざまな形で案内していきたい」とこだわりを話します。

 

「ほんまちの家」の運営が落ち着いた頃、服部さんは万葉線坂下町電停前に位置する、3つの長屋が連続した空き物件と出会います。

「立地も建物も良いのに、誰も良い場所だと思っていない。
ここなら点ではなく、面としてまちづくりができるのでは」と考え、物件を購入。1年ほど構想に悩んだものの、奥行きが狭く、細長い長屋の個性を生かし、若手事業者にテナントとして貸し出す 「小さな商店街」の立ち上げを決意します。

「高岡でチャレンジする人を応援したいと思った。時には出店者の事業計画書を一緒に作ったこともある」と話します。

 

2022年にオープンした「サカサカ」は、シェアキッチンを備えたフリースペース「アウトドアリビング」を挟むように、ピザ屋、美容室、コーヒースタンド、レンタルスペースなど、個性豊かな計7店舗が出店しています。

誰でも気軽に入れるフリースペースは、買い物客だけではなく、地域住民の憩いの場としても活用されているそう。また、地域イベントとタイアップしたマルシェイベントなども開催されており、街のにぎわいを生み出す場としても活用されています。

 

「ほんまちの家」や「サカサカ」は、企画から設計、施工、日々のイベントに至るまで、みんなでアイデアを出し合いながら運営してきました。
「どれも決して一人では作ることができなかったし、みんなで作り上げられたからこそ、街のにぎわいにつながっている」と話す服部さん。

「我慢や無理をしてまちづくりを行うのではなく、自分が街を楽しんでいたら、自然と街にとってプラスの影響になっているのが理想。それぞれの立場でできることを合わせていけば、今までできなかったことも実現できる。街のためにと気負わず、自然体で街を楽しむ人が増えたら良い」と思いを語ってくれました。

増え続ける空き家を活用し、地域を巻き込みながら、高岡に新たな街のにぎわいを生み出している服部さん。住民主体で手掛けるまちづくりにより、今後高岡の街はより一層盛り上がっていきそうです。