本当に“美味しい”富山を、県外へ、海外へ
Japanese Restaurant GEJO オーナーシェフ 下條貴大さん
富山市の北部にある岩瀬地区は、かつて北前船の寄港地として栄え、現在でも交易で栄えた廻船問屋(かいせんどんや)の屋敷が並び、当時の街並みを残しています。
近年では飲食店や作家のアトリエが増えており、富山市内でも人気の観光スポットとなっています。
そんな岩瀬の地で鮨を中心に、富山の食材にこだわった料理を提供する「GEJO(げじょう)」オーナーシェフの下條貴大(げじょうたかひろ)さんにお話を伺いました。
世界を見て廻る
富山県内で生まれ育った下條さん。県内のすし店、フランス料理店など多くの名店で修行を重ねてきました。
「GEJO」として独立する前には、フランスやイタリア、スペイン、ブルガリアなどヨーロッパ諸国を中心に巡り、多くの人と出会い見聞を深めました。
「ブルガリアでプライベートシェフを務めたときや、ワインの産地であるフランスのブルゴーニュ地方を訪れたときなど、各地で得た人脈や知見が現在も生かされています」と話します。帰国後、2020年1月に「GEJO」をオープンしました。
現在では、下條さんが腕を振るう美食を求めて、県内にとどまらず国内外から多くの人が岩瀬に足を運びます。
ペアリングを楽しむ独自のスタイル
お店では、コース仕立てでワインや日本酒とともに和食が提供され、締めに鮨を握る独自のスタイルが楽しめます。お酒とのペアリングを楽しんでもらえるようにコースが組み立てられ、日本や世界で得た調理方法やアイデアを取り入れた料理が堪能できます。
ペアリングされるお酒は同じ岩瀬地区の桝田酒造店の日本酒「満寿泉(ますいずみ)」や、フランスやイタリアで出会った日本人が醸造するワインなどが置かれています。
「自分が本当においしいと思ったものをお酒と一緒に楽しんでもらう、自分らしいレストランにしたいと思った結果、現在のスタイルになりました」と独自のスタイルに至った理由を語ります。
本当においしいものだけを届けたい
日本や世界で出会ったおいしいものを届けたいという思いから、富山の食材を中心に、自身の目と舌で確かめた食材を厳選しています。
富山の旬の魚を使うことが下條さんのこだわりです。「魚種は日本でもトップクラス。春であればホタルイカやシロエビ、サクラマスなどシーズンごとにおいしい旬の魚がそろうことが魅力です」と、天然のいけすと称される富山湾の魚の魅力を語ります。
「出会いや縁も大切にしています」と、食材や調味料、お酒などはこれまで出会った生産者のものを使うこともこだわりの1つです。
「GEJO」流のおもてなし
おいしいものを楽しんでもらうため、食器や場づくりにもこだわりがあります。
料理を引き立てる器は、同じ岩瀬にアトリエを構える作家の作品や430余年の歴史を持つ「越中瀬戸焼」など富山ならではの器を使用し、料理を美しく彩ります。
カウンターに立つ際は着物にげたを合わせるのが最近の正装だという下條さん。
石張りの床とげたの歯が奏でる軽やかな音が印象的です。そんな下條さんとカウンター越しに会話を楽しみながら料理をいただくのも魅力の1つです。
「カウンターを挟んで距離が近いので、せっかくなら自分もお客さんも楽しめる場にしたい」と笑顔で語ります。
食事だけでなく、器へのこだわりや下條さんの気さくな人柄も「GEJO」流のおもてなしです。
富山から世界へ
海外で鮨を握るイベントや県外のシェフとコラボしたイベントなど、富山のPR活動となるイベントにも積極的に参加する下條さん。これまでの縁から依頼を受けることも多いそうです。
「海外や県外に行くと、富山にいても出会えない人や景色と縁を作ることができて刺激になります。そういった人たちが富山に来たいと思ってもらえるよう、自分のオリジナリティーを出しながら富山のおいしいものをPRできたら嬉しいです」と話します。
「県内外の生産者と組んで、『GEJO』のエッセンスを加えた商品も作っています」とも話す下條さん。店内には、黒や淡いピンク色の大門そうめんや、生タイプとゆでタイプの2種類あるホタルイカの沖漬けなど、「GEJO」オリジナルの富山の名産品が並びます。これらはお土産として店内で購入ができるほか、下條さんがイベントで国内外に出張に行く際の手土産としても利用しているそうで、富山のPRに一役買っています。
富山から世界へ。「本当においしい」と思う富山の食材や生産者を知ってもらうため、下條さんの挑戦はこれからも続きます。